絢爛舞踏祭―Brave new world
2005年8月25日 読了本
ISBN:4840229775 2005/08 ¥609
著:明神 真琴
イラスト:きむらじゅんこ
電撃文庫(メディアワークス)
==================================================
ゲーム版『絢爛舞踏祭』ノベライズ。
2250年、ジョージ・タフト大統領の外交工作により、太陽系知類は
海軍魔女艦隊(ネーバル・ウィッチ)と休戦協定を結んだが・・・。
戦後不況にあえぐ世界はやがて再び混迷の一途を辿りつつあった。
2252年、宇宙が居場所だった第六艦隊のハリー・オコーネル大尉は
火星の海で治安活動を行う大気圏軍に転属となる。
彼の操るJ級フレームは、宇宙用の<人形>から火星の海に合うよう
改造されたラウンド・バックラーである。
shield−絶対物理防壁を機体前面に発生させ、ぶつかるもの全て
『反力を受けずに対象を消滅させる』ことができる。
第六艦隊の生き残り、先に火星入りしていたカール・ドランジ中尉に
RB操作のコツを教わるハリー。宇宙と異なる水中の操縦。
呑み込めてきたところで、早速密輸船団に出くわしてしまう。
そこで艦隊指揮をとるトシロー・スミス少佐の非道ぶりを見たのが
ハリーの運のツキ・・・新たな戦いの始まりとなる。
==================================================
メインキャラクターはハリー・オコーネル。
それからマイケル・コンコード。
マイケルの素性がわかり、彼の火星先住民としての立場や
ゲームでの台詞から読み取れる感情が理解しやすくなった。
ドランジ、え、こんな人なんだ。
なんとなくわかるし、ちょっと違った気もする。
それはそれで面白かった。でも騎士って・・・。
エリザベス艦長もいきいきとして、ゲームよりずっといい。
(私のプレイでそういう印象を持っただけです)
ポー教授が弱気なのが意外。
希望号に乗るパイロットとしてのPCキャラの位置は・・・微妙。
男性として描かれている。
ハリーを主人公として読むと、実力ともなう良き脇役って感じ。
とは言っても顔が見えない。プレイヤーキャラだけに、
どの程度色づけするのか苦慮されている気がする。
うーんと。飄々とした感じ。
ゲーム版のビジュアルがもうちょっと好みだったらなー。
どうもいまいち。PCキャラは男性も女性も私的にどっちつかず。
あー、ゲームじゃなくて本の感想だった。ええと。
今回のこういう登場の仕方好きなんだけど。
名前がカルロウ・コロデとつけられています。
何かのもじりか、それとも特に意味はないのか。
スミスがどんだけバカ上司かもよくわかりました。
銀河英雄伝説あたりで出てきそうな愚者っぷりで
つくづく部下の兵隊さんたちが哀れだと思います。
しかし。
それを影で操るのは・・・・!!
==================================================
口絵(ピンナップ)にゲーム版の登場人物の名前と顔写真。
ピンナップイラストはアキ&ミズキのマッサージ風景イカナ見学。
表紙のまんなかに陣取るヤガミはちょこちょこっと出てきて
ラストに思い切り、場をさらって行きました。(私だけの感想か?)
腹黒上等。
キザ眼鏡っ。
==================================================
表紙絵がイメージとちょっと違いました(笑)。
挿絵はこういうのもアリかな?とそれほど気にならなかったけれど
表紙裏表紙の違和感はぬぐえず。アニメ絵っぽすぎるのかな?
多少、メディアミックスということで暈かしてある部分があるにせよ、
単体小説としても楽しめるように工夫すればいいんであって、
(実際、けっこう楽しめました)
装丁がこういう感じだと、手に取る人の層を狭めると思う。
ゲームソフトは15歳以上推奨に設定してあるのだから
もう少し落ち着いたデザインで展開しても良かったのでは・・。
イラストレーターはそのままでも、色合いや描画タッチを
もうちょい考えてみるとか。
小説の内容から受けたイメージだと、火星の海やメカだけの
イラストでも充分。それでは人目を惹かないのでしょうか。
(読了:8/11〜12?)
==================================================
所謂、文庫の<ライトノベル>って好んでは読まないんですが・・。
集めて読んでるのって『十二国記』シリーズくらいかな。
読めばきっと面白いだろうな、と思うようなのは幾つかあります。
装丁や表紙絵など、書店で手に取りにくいです。
コミックはJCでも何でもまとめてレジに積みますが
なんでこのテの本は何となく気後れするのだろう。
慣れれば一緒のよーな気がする。
今回のようにゲーム原案で、元の作品にはまったもので何点か。
昔、幻水の短編集で青雷の某が読みたくて読んだ。
あと、すてプリのフューレの回だけとか。
「誰か」が描かれているのが読みたいだけで買ったのばっか。
著:明神 真琴
イラスト:きむらじゅんこ
電撃文庫(メディアワークス)
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ゲーム版『絢爛舞踏祭』ノベライズ。
2250年、ジョージ・タフト大統領の外交工作により、太陽系知類は
海軍魔女艦隊(ネーバル・ウィッチ)と休戦協定を結んだが・・・。
戦後不況にあえぐ世界はやがて再び混迷の一途を辿りつつあった。
2252年、宇宙が居場所だった第六艦隊のハリー・オコーネル大尉は
火星の海で治安活動を行う大気圏軍に転属となる。
彼の操るJ級フレームは、宇宙用の<人形>から火星の海に合うよう
改造されたラウンド・バックラーである。
shield−絶対物理防壁を機体前面に発生させ、ぶつかるもの全て
『反力を受けずに対象を消滅させる』ことができる。
第六艦隊の生き残り、先に火星入りしていたカール・ドランジ中尉に
RB操作のコツを教わるハリー。宇宙と異なる水中の操縦。
呑み込めてきたところで、早速密輸船団に出くわしてしまう。
そこで艦隊指揮をとるトシロー・スミス少佐の非道ぶりを見たのが
ハリーの運のツキ・・・新たな戦いの始まりとなる。
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メインキャラクターはハリー・オコーネル。
それからマイケル・コンコード。
マイケルの素性がわかり、彼の火星先住民としての立場や
ゲームでの台詞から読み取れる感情が理解しやすくなった。
ドランジ、え、こんな人なんだ。
なんとなくわかるし、ちょっと違った気もする。
それはそれで面白かった。でも騎士って・・・。
エリザベス艦長もいきいきとして、ゲームよりずっといい。
(私のプレイでそういう印象を持っただけです)
ポー教授が弱気なのが意外。
希望号に乗るパイロットとしてのPCキャラの位置は・・・微妙。
男性として描かれている。
ハリーを主人公として読むと、実力ともなう良き脇役って感じ。
とは言っても顔が見えない。プレイヤーキャラだけに、
どの程度色づけするのか苦慮されている気がする。
うーんと。飄々とした感じ。
ゲーム版のビジュアルがもうちょっと好みだったらなー。
どうもいまいち。PCキャラは男性も女性も私的にどっちつかず。
あー、ゲームじゃなくて本の感想だった。ええと。
今回のこういう登場の仕方好きなんだけど。
名前がカルロウ・コロデとつけられています。
何かのもじりか、それとも特に意味はないのか。
スミスがどんだけバカ上司かもよくわかりました。
銀河英雄伝説あたりで出てきそうな愚者っぷりで
つくづく部下の兵隊さんたちが哀れだと思います。
しかし。
それを影で操るのは・・・・!!
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口絵(ピンナップ)にゲーム版の登場人物の名前と顔写真。
ピンナップイラストはアキ&ミズキのマッサージ風景イカナ見学。
表紙のまんなかに陣取るヤガミはちょこちょこっと出てきて
ラストに思い切り、場をさらって行きました。(私だけの感想か?)
腹黒上等。
キザ眼鏡っ。
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表紙絵がイメージとちょっと違いました(笑)。
挿絵はこういうのもアリかな?とそれほど気にならなかったけれど
表紙裏表紙の違和感はぬぐえず。アニメ絵っぽすぎるのかな?
多少、メディアミックスということで暈かしてある部分があるにせよ、
単体小説としても楽しめるように工夫すればいいんであって、
(実際、けっこう楽しめました)
装丁がこういう感じだと、手に取る人の層を狭めると思う。
ゲームソフトは15歳以上推奨に設定してあるのだから
もう少し落ち着いたデザインで展開しても良かったのでは・・。
イラストレーターはそのままでも、色合いや描画タッチを
もうちょい考えてみるとか。
小説の内容から受けたイメージだと、火星の海やメカだけの
イラストでも充分。それでは人目を惹かないのでしょうか。
(読了:8/11〜12?)
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所謂、文庫の<ライトノベル>って好んでは読まないんですが・・。
集めて読んでるのって『十二国記』シリーズくらいかな。
読めばきっと面白いだろうな、と思うようなのは幾つかあります。
装丁や表紙絵など、書店で手に取りにくいです。
コミックはJCでも何でもまとめてレジに積みますが
なんでこのテの本は何となく気後れするのだろう。
慣れれば一緒のよーな気がする。
今回のようにゲーム原案で、元の作品にはまったもので何点か。
昔、幻水の短編集で青雷の某が読みたくて読んだ。
あと、すてプリのフューレの回だけとか。
「誰か」が描かれているのが読みたいだけで買ったのばっか。
ISBN:4150100705 1972/10 ¥588
『銀河市民』CITIZEN OF THE GALAXY
著:ロバート・A・ハインライン
Robert A. Heinlein 1957
翻訳:野田 昌宏
ハヤカワ文庫SF (早川書房)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
惑星サーゴンで行われている奴隷市場。
誰も買い手のつかないボロボロの少年を
一癖ありそうな乞食老人が引き取る。
義足の老乞食が少年を連れて行った家は
乞食のそれとは思えないほど清潔で、質素ではあるが
立派なつくりをしていた。
老人バスリムは、少年ソービーにに充分な食べ物と
知識、生きる術を教え込んだ。
日々は変わらず乞食で暮らしていくのだが、
ソービーに時折使いを頼んだり、睡眠学習で
いろんな言葉を覚えさせる。
やがて謎を残したまま、バスリムは
ソービーに別れを告げ、少年は新たな庇護者のもと
新たな社会に溶け込もうと努力していく。
その先々で明らかになることは・・・。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
宇宙を自在に飛び続け、行商を行う『一族』の船。
掟に縛られながら<自由>である意味。
広がり続ける銀河社会をすべて守ることは不可能だが
今出来ることをしなければならない軍隊の人々。
育ててくれたバスリムが何をしようとしていたのか。
ソービーは義父の足跡をたどりながら、
銀河に蔓延する人身売買と奴隷制度に立ち向かうことになる。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
バスリムが繰り返しソービーに教えたこと、
奴隷ではなく、一市民として自由な人間であること。
そして果たすべき義務。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
舞台や設定は<SF>だが、現代社会の物語を
読んでいるような気になった。ソービーが出逢う人々や
放り込まれる「社会」、民族や文化の違い。
現実世界の何が発想のもとになっているのか
知りたくなったし、推測するのも面白い。
それは架空のことながら、欧米から見た他文明・文化の
理解できないことに着想を得ているかもしれない。
豪華な地球文明の上流階級のひとびとの暮らしは
いかにもホワイトカラーの雰囲気が漂う。
「悪」「黒社会」をヒーローが倒すだけでは終らない現実。
また何が「悪」で、「正義」なのか。
社会の課題を、すぐに片付けることなどできないこと。
ソービーの苛立ちや焦りはそのまま読者に跳ね返り
残り頁が少なくなるのを気にするだろう。
その先にあるもの、何世紀も先の未来を見据えて
今できることをソービーは模索し続ける。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
つい最近、ハヤカワ名作セレクションとして
文庫の装丁を一新、読みやすい活字・時間になって
新刊で並んでいました。>ISBN: 4150115176 (2005/05/25)
表紙も良かったし、持っているのに欲しくなってしまいました。
何度も本屋で手にとっては自分に「待て」をしてます。
積読本のほうを読んで、心に残る大切な本だと思ったら
新装版のほうを改めて買おうと思いました。
訳は野田氏のままらしいので、ソービーは変わらず
バスリムを『父ちゃん』って呼び掛けてるんでしょうね。
読んだのは1992年15刷、表紙もコミック調のイラスト。
本文にも挿絵つきです。古本屋で購入。
自分はすぐイメージ固定されやすいので
表紙と挿絵はけっこう重要なのですが
今回は無くても良かったなあ、と思いました。
あまり好きな絵柄じゃなかったのです。
当時のアニメーションやコミックを彷彿させる絵柄?なのかな。
観たことあるようなないような・・・。
イラストレーターのお名前で調べたら、
別名の作品が出てきて、あ、この方かあ、と。
残念ながら読んだことはないけど、青年誌(等)向けの。
別名のほうを存じ上げているってのもどうなんだ。
あと、翻訳文も慣れるまでときどき読みづらかった。
ささいな誤字が何度かみつかって、校正が雑だったのかと
思いました。
複数の彼・彼女がいる場面での訳は大変だろうなと思った。
文脈からどっちの彼彼女かそりゃわかるだろうけど
訳文にするとき重なると、ごっちゃでくどくなりやすい。
『父ちゃん』って呼称も最初なんだかなーと思っていたが
やっぱり『父ちゃん』なのかもしれないと思い至る。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ひとまず読み終えたので、新装版の購入については
じっくり本屋で悩もうと思います。
『銀河市民』CITIZEN OF THE GALAXY
著:ロバート・A・ハインライン
Robert A. Heinlein 1957
翻訳:野田 昌宏
ハヤカワ文庫SF (早川書房)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
惑星サーゴンで行われている奴隷市場。
誰も買い手のつかないボロボロの少年を
一癖ありそうな乞食老人が引き取る。
義足の老乞食が少年を連れて行った家は
乞食のそれとは思えないほど清潔で、質素ではあるが
立派なつくりをしていた。
老人バスリムは、少年ソービーにに充分な食べ物と
知識、生きる術を教え込んだ。
日々は変わらず乞食で暮らしていくのだが、
ソービーに時折使いを頼んだり、睡眠学習で
いろんな言葉を覚えさせる。
やがて謎を残したまま、バスリムは
ソービーに別れを告げ、少年は新たな庇護者のもと
新たな社会に溶け込もうと努力していく。
その先々で明らかになることは・・・。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
宇宙を自在に飛び続け、行商を行う『一族』の船。
掟に縛られながら<自由>である意味。
広がり続ける銀河社会をすべて守ることは不可能だが
今出来ることをしなければならない軍隊の人々。
育ててくれたバスリムが何をしようとしていたのか。
ソービーは義父の足跡をたどりながら、
銀河に蔓延する人身売買と奴隷制度に立ち向かうことになる。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
バスリムが繰り返しソービーに教えたこと、
奴隷ではなく、一市民として自由な人間であること。
そして果たすべき義務。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
舞台や設定は<SF>だが、現代社会の物語を
読んでいるような気になった。ソービーが出逢う人々や
放り込まれる「社会」、民族や文化の違い。
現実世界の何が発想のもとになっているのか
知りたくなったし、推測するのも面白い。
それは架空のことながら、欧米から見た他文明・文化の
理解できないことに着想を得ているかもしれない。
豪華な地球文明の上流階級のひとびとの暮らしは
いかにもホワイトカラーの雰囲気が漂う。
「悪」「黒社会」をヒーローが倒すだけでは終らない現実。
また何が「悪」で、「正義」なのか。
社会の課題を、すぐに片付けることなどできないこと。
ソービーの苛立ちや焦りはそのまま読者に跳ね返り
残り頁が少なくなるのを気にするだろう。
その先にあるもの、何世紀も先の未来を見据えて
今できることをソービーは模索し続ける。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
つい最近、ハヤカワ名作セレクションとして
文庫の装丁を一新、読みやすい活字・時間になって
新刊で並んでいました。>ISBN: 4150115176 (2005/05/25)
表紙も良かったし、持っているのに欲しくなってしまいました。
何度も本屋で手にとっては自分に「待て」をしてます。
積読本のほうを読んで、心に残る大切な本だと思ったら
新装版のほうを改めて買おうと思いました。
訳は野田氏のままらしいので、ソービーは変わらず
バスリムを『父ちゃん』って呼び掛けてるんでしょうね。
読んだのは1992年15刷、表紙もコミック調のイラスト。
本文にも挿絵つきです。古本屋で購入。
自分はすぐイメージ固定されやすいので
表紙と挿絵はけっこう重要なのですが
今回は無くても良かったなあ、と思いました。
あまり好きな絵柄じゃなかったのです。
当時のアニメーションやコミックを彷彿させる絵柄?なのかな。
観たことあるようなないような・・・。
イラストレーターのお名前で調べたら、
別名の作品が出てきて、あ、この方かあ、と。
残念ながら読んだことはないけど、青年誌(等)向けの。
別名のほうを存じ上げているってのもどうなんだ。
あと、翻訳文も慣れるまでときどき読みづらかった。
ささいな誤字が何度かみつかって、校正が雑だったのかと
思いました。
複数の彼・彼女がいる場面での訳は大変だろうなと思った。
文脈からどっちの彼彼女かそりゃわかるだろうけど
訳文にするとき重なると、ごっちゃでくどくなりやすい。
『父ちゃん』って呼称も最初なんだかなーと思っていたが
やっぱり『父ちゃん』なのかもしれないと思い至る。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ひとまず読み終えたので、新装版の購入については
じっくり本屋で悩もうと思います。
アンドロイドは電気羊の夢を見るか?
2005年6月19日 読了本
ISBN:4150102295 1977/03 ¥672
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
DO ANDROIDS DREAM OF ELECTRIC SHEEP?
著:フィリップ・K・ディック Philip K. Dick
訳:浅倉 久志
ハヤカワ文庫SF(早川書房)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(あらすじ引用ここから〜)
長く続いた戦争のため、放射能灰に汚染され廃墟と化した地球。生き残ったものの中には異星に安住の地を求めるものも多い。そのため異星での植民計画が重要視されるが、過酷で危険を伴う労働は、もっぱらアンドロイドを用いて行われている。また、多くの生物が絶滅し稀少なため、生物を所有することが一種のステータスとなっている。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(ここまで引用そのまま)
人間とほとんど変わらず合成されたアンドロイドと
人間を区別するものは何か。
最後まで、読んでいる私には
はっきりとした答えが見つかりませんでした。
今もぼんやり考えてます。
ぞっとする、気持ち悪かった場面。
最初に挙げた問いを頭の隅っこにずっと置いたまま
ずっと読み進めてきて、あのアンドロイドたちが
蜘蛛の足を切り落としていくところ。
普段、ちっこい羽虫が家に入ってきたら、
当たり前のように駆除しているのに、
この場面ではイジドアの気持ちと重なるように
やめて欲しいと思った。
と同時に、アンドロイドではなくて、
彼らのような人間は現実にいることを考えた。
興味から、好奇心から、自分の考えを試すため。
相手の痛みや苦しみを想像できないから、
思いやることができない、共感できないから。
それなら、人間にもたくさんいると思う。
また、相手の痛みを想像できるからこそ
わざわざ苦しめることを楽しむ人間もいる。
それをも模倣する頭脳を持つようになるなら、
生殖や代謝の問題を抜かして、人間と
アンドロイドの区別は、この物語世界では
ほとんど出来ないだろう。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
アンドロイドが火星から人間を殺して逃げてきた、
それを賞金稼ぎが追う、という設定からは
追うもの、追われるものの活劇を想像させた。
アンドロイドも、精巧に出来ているものの、
頭部をふっ飛ばせば、機械の部品が剥きだしになり
パチパチとショートするようなイメージを抱いてた。
(古い・・?)
じゃなかったら攻殻の義体のような。
全然違いました。
この物語では、見た目も破壊された死体からも
推測できないという。有機的に判定するのは骨髄検査。
ならば擬似血液や内臓もある合成人間ということになる。
涙を流し、食べることもできる。
効果が怪しい(?)フォークト・カンプフ検査法は
質問に対する反応を眼筋と毛細血管で測定する。
様々な社会状況における感情移入反応。
その質問内容は読んでいる側からすると滑稽にも思える。
だが、動物を飼わない人間が不道徳で同情心が無いと思われる
社会においては、人間以外の生物にも共感をもって然るべきだと。
歩合給のサラリーマンであるハンターが、
こつこつアンドロイドを殺して、どうしても手に入れたいものが
「生きた本物の動物」というのは、物哀しい。
絶滅寸前の動物としての人類としても、
社会生活のなかでステイタスを必要としていることも。
レプリカを用意してまで周囲を欺く行為はいじましい。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
持っている版は1994年32刷。560円。
10年で文庫本も百円以上価格が上がるんだなあ〜。
初版は1977年3月15日とある。
映画『ブレードランナー』はテレビ放映時に
何度か眼にしたくらいで、最初から最後まで通して
観たことはないため、比較の楽しみは今回なし。
でも観ないで読んで良かったと思う。
テレビでちらっと観たときのイメージとは
物語はかなり違っていた。くらいで。
ハリソン・フォードが出てたよなあ〜、
主人公のデッカードさんは彼が演じたのかな。
・・・と思ったら、頭に浮かぶデッカードは
ハリソン君になってしまって(イメージを)
追い払うのに苦慮。どんな場面でもふわふわと漂い、
結局最後まで彼のイメージで読むこととなった。
修行が足りない・・・。(何の)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
子供の頃、姉のたくさんのハヤカワSF文庫のなかに
この本のタイトルがあったような気がします。
清原なつのさんの「アンドロイドは電気毛布の夢を見るか?」
というパロディタイトルで思い出して、
元ネタを読んでみようと思ったのが買ったきっかけ。
古本屋で見つけたんだと思う。
積読暦7〜8年か。
ことにファンタジーとSFの分野においては
特定だと思われる読者層の多くに好評、
また、一部に権威を発揮する賞などで挙げられる作品は、
だいたいの場合、私にとって「アタリ」が多いのです。
とは言ってもそんなに作品数を読んでいるわけでなし。
しかし、何度もそんなことがあるうちに、
「この賞をもらっているなら、かなり期待できそう」から、
読後は「やっぱり(ああいう)支持を得るだけあるな!」と
思い込みやすいのも確かです。
ただ読んでいる最中は没頭していて、賞だの何だのは
あまり関係ありません。
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』
DO ANDROIDS DREAM OF ELECTRIC SHEEP?
著:フィリップ・K・ディック Philip K. Dick
訳:浅倉 久志
ハヤカワ文庫SF(早川書房)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(あらすじ引用ここから〜)
長く続いた戦争のため、放射能灰に汚染され廃墟と化した地球。生き残ったものの中には異星に安住の地を求めるものも多い。そのため異星での植民計画が重要視されるが、過酷で危険を伴う労働は、もっぱらアンドロイドを用いて行われている。また、多くの生物が絶滅し稀少なため、生物を所有することが一種のステータスとなっている。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(ここまで引用そのまま)
人間とほとんど変わらず合成されたアンドロイドと
人間を区別するものは何か。
最後まで、読んでいる私には
はっきりとした答えが見つかりませんでした。
今もぼんやり考えてます。
ぞっとする、気持ち悪かった場面。
最初に挙げた問いを頭の隅っこにずっと置いたまま
ずっと読み進めてきて、あのアンドロイドたちが
蜘蛛の足を切り落としていくところ。
普段、ちっこい羽虫が家に入ってきたら、
当たり前のように駆除しているのに、
この場面ではイジドアの気持ちと重なるように
やめて欲しいと思った。
と同時に、アンドロイドではなくて、
彼らのような人間は現実にいることを考えた。
興味から、好奇心から、自分の考えを試すため。
相手の痛みや苦しみを想像できないから、
思いやることができない、共感できないから。
それなら、人間にもたくさんいると思う。
また、相手の痛みを想像できるからこそ
わざわざ苦しめることを楽しむ人間もいる。
それをも模倣する頭脳を持つようになるなら、
生殖や代謝の問題を抜かして、人間と
アンドロイドの区別は、この物語世界では
ほとんど出来ないだろう。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
アンドロイドが火星から人間を殺して逃げてきた、
それを賞金稼ぎが追う、という設定からは
追うもの、追われるものの活劇を想像させた。
アンドロイドも、精巧に出来ているものの、
頭部をふっ飛ばせば、機械の部品が剥きだしになり
パチパチとショートするようなイメージを抱いてた。
(古い・・?)
じゃなかったら攻殻の義体のような。
全然違いました。
この物語では、見た目も破壊された死体からも
推測できないという。有機的に判定するのは骨髄検査。
ならば擬似血液や内臓もある合成人間ということになる。
涙を流し、食べることもできる。
効果が怪しい(?)フォークト・カンプフ検査法は
質問に対する反応を眼筋と毛細血管で測定する。
様々な社会状況における感情移入反応。
その質問内容は読んでいる側からすると滑稽にも思える。
だが、動物を飼わない人間が不道徳で同情心が無いと思われる
社会においては、人間以外の生物にも共感をもって然るべきだと。
歩合給のサラリーマンであるハンターが、
こつこつアンドロイドを殺して、どうしても手に入れたいものが
「生きた本物の動物」というのは、物哀しい。
絶滅寸前の動物としての人類としても、
社会生活のなかでステイタスを必要としていることも。
レプリカを用意してまで周囲を欺く行為はいじましい。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
持っている版は1994年32刷。560円。
10年で文庫本も百円以上価格が上がるんだなあ〜。
初版は1977年3月15日とある。
映画『ブレードランナー』はテレビ放映時に
何度か眼にしたくらいで、最初から最後まで通して
観たことはないため、比較の楽しみは今回なし。
でも観ないで読んで良かったと思う。
テレビでちらっと観たときのイメージとは
物語はかなり違っていた。くらいで。
ハリソン・フォードが出てたよなあ〜、
主人公のデッカードさんは彼が演じたのかな。
・・・と思ったら、頭に浮かぶデッカードは
ハリソン君になってしまって(イメージを)
追い払うのに苦慮。どんな場面でもふわふわと漂い、
結局最後まで彼のイメージで読むこととなった。
修行が足りない・・・。(何の)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
子供の頃、姉のたくさんのハヤカワSF文庫のなかに
この本のタイトルがあったような気がします。
清原なつのさんの「アンドロイドは電気毛布の夢を見るか?」
というパロディタイトルで思い出して、
元ネタを読んでみようと思ったのが買ったきっかけ。
古本屋で見つけたんだと思う。
積読暦7〜8年か。
ことにファンタジーとSFの分野においては
特定だと思われる読者層の多くに好評、
また、一部に権威を発揮する賞などで挙げられる作品は、
だいたいの場合、私にとって「アタリ」が多いのです。
とは言ってもそんなに作品数を読んでいるわけでなし。
しかし、何度もそんなことがあるうちに、
「この賞をもらっているなら、かなり期待できそう」から、
読後は「やっぱり(ああいう)支持を得るだけあるな!」と
思い込みやすいのも確かです。
ただ読んでいる最中は没頭していて、賞だの何だのは
あまり関係ありません。
ISBN:4391130874 単行本 2005/05 ¥840
著:コンドウ アキ
主婦と生活社
リラックマシリーズ第三弾。
「リラックマ生活3」をあえてバッテンして
トリメインを強調(笑)
キイロイトリさんがメインとはいえ、
イラストはほとんどリラックマ&コリラックマとの
やり取りがしっかり入っているので、
今までのシリーズが好きなら続けて読むのもいい。
書店平積みのものをパラパラ立ち読みするだけで
内容はわかるけれども、あえて買うなら
キャラ好きなひと、キャラ愛でるひと、
毎日占いや御神籤好きなひと向けか。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
リラックマのちょい丁寧語のゆったり口調と異なり
いつも怒ったりツッコミ入れてるトリさんの言葉は
命令口調のカタカナ語なので、他の二冊に比べて
ちょっと説教くさいかもしれないです。
意志の弱い人が叱って欲しいときや
なんとなく励まして欲しいときにいいのかな。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
私の場合は、おおいに頷いたりする反面、
たまに、なんか鬱陶しくなることもあります。
こういうのは、
我が身を振り返ってしまうようなことがあるから
また心に引っ掛かりがあるから反発もするのかも?
深く考えずに、キャラが可愛いことに和んだり、
「あー、あるある」って幾つかでも共感すればいい。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
可愛いキャラクターに「自分」に言い聞かせるような
文言がついてる<ちびギャラ>のいろんな作品を観ても
この台詞わかるな、と思いながら、どこか
押し付けがましく感じる時もあるし、
わかったように言ってんじゃね〜くらい
思うことはないんだろうか?と思ったります。
応援する言葉、自戒、自省、
ほんのつぶやき、誰かを思う気持ち、いろいろ。
それは作者やスタッフが自分自身にも言ってることだと思う。
また、商品化されていくうちに狙って作る言葉でもあるだろう。
若い頃ならば、親や友達に頭ごなしに言われるより
こうした言葉で、自分を振り返ることもあるのかな?
年を重ねるごとに人の忠告に耳を貸さなくなるが(多分)
そもそも人のことを思いやって忠告してくれる人も
だんだん少なくなることは確かだ。
ヘンに諭したり、厳しいことを言って無用な波風立てるほど
皆、暇じゃなくなってるだろうし。
誰に言ってるか定かでない、独り言みたいに溢れる言葉。
そのどこかに、今の自分を見つける。
と、言うより、見つけたいのかな?
歌詞でもなんでも、全ての言葉が、響くわけはなく
染み込むように心に入っていく句もごく僅かかもしれない。
でも、誰かに言って欲しい時がある。
著:コンドウ アキ
主婦と生活社
リラックマシリーズ第三弾。
「リラックマ生活3」をあえてバッテンして
トリメインを強調(笑)
キイロイトリさんがメインとはいえ、
イラストはほとんどリラックマ&コリラックマとの
やり取りがしっかり入っているので、
今までのシリーズが好きなら続けて読むのもいい。
書店平積みのものをパラパラ立ち読みするだけで
内容はわかるけれども、あえて買うなら
キャラ好きなひと、キャラ愛でるひと、
毎日占いや御神籤好きなひと向けか。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
リラックマのちょい丁寧語のゆったり口調と異なり
いつも怒ったりツッコミ入れてるトリさんの言葉は
命令口調のカタカナ語なので、他の二冊に比べて
ちょっと説教くさいかもしれないです。
意志の弱い人が叱って欲しいときや
なんとなく励まして欲しいときにいいのかな。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
私の場合は、おおいに頷いたりする反面、
たまに、なんか鬱陶しくなることもあります。
こういうのは、
我が身を振り返ってしまうようなことがあるから
また心に引っ掛かりがあるから反発もするのかも?
深く考えずに、キャラが可愛いことに和んだり、
「あー、あるある」って幾つかでも共感すればいい。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
可愛いキャラクターに「自分」に言い聞かせるような
文言がついてる<ちびギャラ>のいろんな作品を観ても
この台詞わかるな、と思いながら、どこか
押し付けがましく感じる時もあるし、
わかったように言ってんじゃね〜くらい
思うことはないんだろうか?と思ったります。
応援する言葉、自戒、自省、
ほんのつぶやき、誰かを思う気持ち、いろいろ。
それは作者やスタッフが自分自身にも言ってることだと思う。
また、商品化されていくうちに狙って作る言葉でもあるだろう。
若い頃ならば、親や友達に頭ごなしに言われるより
こうした言葉で、自分を振り返ることもあるのかな?
年を重ねるごとに人の忠告に耳を貸さなくなるが(多分)
そもそも人のことを思いやって忠告してくれる人も
だんだん少なくなることは確かだ。
ヘンに諭したり、厳しいことを言って無用な波風立てるほど
皆、暇じゃなくなってるだろうし。
誰に言ってるか定かでない、独り言みたいに溢れる言葉。
そのどこかに、今の自分を見つける。
と、言うより、見つけたいのかな?
歌詞でもなんでも、全ての言葉が、響くわけはなく
染み込むように心に入っていく句もごく僅かかもしれない。
でも、誰かに言って欲しい時がある。
ISBN:4150307989 2005/05/25 ¥714
『星空の二人』
著:谷 甲州
ハヤカワ文庫JA(早川書房)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
緑の星
星の夢に
五六億七千万年の二日酔い
彷徨える星
繁殖
スペース・ストーカー
ガネッシュとバイラブ
星空の二人
解説/林 譲治
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
人類の探査や侵略を拒むもの。
樹(「緑の星」)と
星(「彷徨える星」)。
星について息子に語っている夢をみた「星の夢に」
14歳で肉体の時を止めたアイリーンとの
パートナーシップ。異星人の攻撃から、
パートナーを守るための死闘。「繁殖」
大いなるバカSF短編がふたつ。
「二日酔い」と「ストーカー」。
二日酔いの方は、タイトルで示されるとおり
弥勒が登場。仏教宇宙におけるバカエロ比喩。
実は壮大な宇宙論か。
「スペース・ストーカー」は平行宇宙からの求愛者に
立ち向かう若い夫婦の話。
<女性が一生でいちばん美しい時期は10代の前半>
との記述を読んで、読者向けにあえて書いたのか
著者の嗜好かちょっと考えてしまった。
(「繁殖」でも10代なので)
二万年に近い年月、仮想人格を搭載した
宇宙船が追いかけるのは・・・「ガネッシュとバイラブ」
新米航宙士の麗奈が、仮想現実の情報プールで会った少年。
同い年くらいに見えたのに、実際はずっと格上の航宙士
であったことがわかり戸惑う。(「星空の二人」)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
表紙(カバーイラスト:水樹和佳子氏)とタイトルで
衝動買い。浪漫的SFでちょっとハードなやつかな、と
思い込んでいました。
このなかですごく好きだなあと思ったのは二編。
「星の夢に」はちょっと泣けた。
二編目にこれがこないで、「二日酔い」がきてたら
表紙でたばかられたと早合点したかも。
「星空の二人」は設定もお話もロマンスに
脳内変換しやすく、ラストにたどりつくのが
勿体無かった。長いこと浸りたいくらい。
萩尾さんや、竹宮さん、佐藤史生さんの
優しい余韻を残すSF短編を思い出した。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
私の好きなSFといったらマキャフリィの『歌う船』
ハインライン『夏への扉』。ブラッドベリの不思議な世界、
アシモフ、ロボットのシリーズ。
ハードSFの定義がいまいちわかってない私。
宇宙物理天文機械他の理系に親しんだ人により楽しめて、
設定も世界観も細かい科学考証をされたファンタジーって
いう印象があります。実際はどうなんでしょうか。
正直、私は雰囲気しか楽しめないのが哀しい。
ところどころ全く理解できてないだろうから。
『星空の二人』
著:谷 甲州
ハヤカワ文庫JA(早川書房)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
緑の星
星の夢に
五六億七千万年の二日酔い
彷徨える星
繁殖
スペース・ストーカー
ガネッシュとバイラブ
星空の二人
解説/林 譲治
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
人類の探査や侵略を拒むもの。
樹(「緑の星」)と
星(「彷徨える星」)。
星について息子に語っている夢をみた「星の夢に」
14歳で肉体の時を止めたアイリーンとの
パートナーシップ。異星人の攻撃から、
パートナーを守るための死闘。「繁殖」
大いなるバカSF短編がふたつ。
「二日酔い」と「ストーカー」。
二日酔いの方は、タイトルで示されるとおり
弥勒が登場。仏教宇宙におけるバカエロ比喩。
実は壮大な宇宙論か。
「スペース・ストーカー」は平行宇宙からの求愛者に
立ち向かう若い夫婦の話。
<女性が一生でいちばん美しい時期は10代の前半>
との記述を読んで、読者向けにあえて書いたのか
著者の嗜好かちょっと考えてしまった。
(「繁殖」でも10代なので)
二万年に近い年月、仮想人格を搭載した
宇宙船が追いかけるのは・・・「ガネッシュとバイラブ」
新米航宙士の麗奈が、仮想現実の情報プールで会った少年。
同い年くらいに見えたのに、実際はずっと格上の航宙士
であったことがわかり戸惑う。(「星空の二人」)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
表紙(カバーイラスト:水樹和佳子氏)とタイトルで
衝動買い。浪漫的SFでちょっとハードなやつかな、と
思い込んでいました。
このなかですごく好きだなあと思ったのは二編。
「星の夢に」はちょっと泣けた。
二編目にこれがこないで、「二日酔い」がきてたら
表紙でたばかられたと早合点したかも。
「星空の二人」は設定もお話もロマンスに
脳内変換しやすく、ラストにたどりつくのが
勿体無かった。長いこと浸りたいくらい。
萩尾さんや、竹宮さん、佐藤史生さんの
優しい余韻を残すSF短編を思い出した。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
私の好きなSFといったらマキャフリィの『歌う船』
ハインライン『夏への扉』。ブラッドベリの不思議な世界、
アシモフ、ロボットのシリーズ。
ハードSFの定義がいまいちわかってない私。
宇宙物理天文機械他の理系に親しんだ人により楽しめて、
設定も世界観も細かい科学考証をされたファンタジーって
いう印象があります。実際はどうなんでしょうか。
正直、私は雰囲気しか楽しめないのが哀しい。
ところどころ全く理解できてないだろうから。
だららん日和―リラックマ生活 2
2005年5月23日 読了本
ISBN:439113019X 単行本 2004/11 ¥840
著:コンドウ アキ
(主婦と生活社)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ブックレヴューに書くものなのかどうか
ちょい考えたくなるほど<キャラクター商品>。
最初から読んで(眺めて)もヨシ。
気分で好きな頁を開いて、占いのごとく
自分自身に問いかけてみてもヨシ。
このテで和める人なら
手元に置いて損なし・・?
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
可愛いし、なんたってだらりんがいい。
チャックのなかみがえらい気になる・・。
なにが入ってるのだ。
一昔前に「だれぱんだ」だっけか、
・・・が流行ったときはぜんぜんなんとも思わず。
むしろあまり好きじゃなかった。
リラックマがお店などで目に付くようになった
始めのころも、あんまり興味なかった。
単純な色、線、あと黒丸点だけの瞳。
ウツロにも見えたし、また媚びてるようにも。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
そのわりにゃ〜「クマ全般」好きなので
一度ツボにはまるとなかなか抜けない。
本買っちゃうくらいだしなあ。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
森チャックさんのクマはこわくて残酷でかわいい。
なんだろうね。いったい。
年明けに気に入ったのは温泉クマちゃん。
あれも真っ赤な口がミョーにこわい。笑顔。
クマキャラ・・・なんで好きなんだろ。
ヒグマやツキノワグマ、白クマなど
ホンモノは映像で見ると恐ろしいのになあ。
でも白クマの子供は可愛いかわいい。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
定番テディベアのクマがいちばん和む。
それとアーネスト・ハワード・シェパードさんの
プーの絵。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
正直なところ、キャラ好きすぎるのも
恥ずかしい気持ちはちょっとはある。
これもまた何でだろうと思う。
でも大人だろうが子供だろうが
いいんじゃないのかね、もうなんでも。
何が好きかは。
「好きなんだからしょうがない!」
といつも(自分に?)言い訳してる気がする。
著:コンドウ アキ
(主婦と生活社)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ブックレヴューに書くものなのかどうか
ちょい考えたくなるほど<キャラクター商品>。
最初から読んで(眺めて)もヨシ。
気分で好きな頁を開いて、占いのごとく
自分自身に問いかけてみてもヨシ。
このテで和める人なら
手元に置いて損なし・・?
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
可愛いし、なんたってだらりんがいい。
チャックのなかみがえらい気になる・・。
なにが入ってるのだ。
一昔前に「だれぱんだ」だっけか、
・・・が流行ったときはぜんぜんなんとも思わず。
むしろあまり好きじゃなかった。
リラックマがお店などで目に付くようになった
始めのころも、あんまり興味なかった。
単純な色、線、あと黒丸点だけの瞳。
ウツロにも見えたし、また媚びてるようにも。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
そのわりにゃ〜「クマ全般」好きなので
一度ツボにはまるとなかなか抜けない。
本買っちゃうくらいだしなあ。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
森チャックさんのクマはこわくて残酷でかわいい。
なんだろうね。いったい。
年明けに気に入ったのは温泉クマちゃん。
あれも真っ赤な口がミョーにこわい。笑顔。
クマキャラ・・・なんで好きなんだろ。
ヒグマやツキノワグマ、白クマなど
ホンモノは映像で見ると恐ろしいのになあ。
でも白クマの子供は可愛いかわいい。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
定番テディベアのクマがいちばん和む。
それとアーネスト・ハワード・シェパードさんの
プーの絵。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
正直なところ、キャラ好きすぎるのも
恥ずかしい気持ちはちょっとはある。
これもまた何でだろうと思う。
でも大人だろうが子供だろうが
いいんじゃないのかね、もうなんでも。
何が好きかは。
「好きなんだからしょうがない!」
といつも(自分に?)言い訳してる気がする。
日本幻想文学集成 (23) 岡本綺堂
2005年4月17日 読了本
ISBN:4336032335 単行本 1993/09 ¥1,835
著:岡本綺堂
編:種村季弘
国書刊行会
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
影を踏まれた女
魚妖
鰻に呪はれた男
猿の眼
蟹
黄い紙
火薬庫
穴
蛔虫
停車場の少女
兜
鎧櫃の血
置いてけ堀
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
岡本綺堂の幻想的な短編集。
『青蛙堂鬼談』『探偵夜話』『近代異妖編』などから。
怪異が現れても、謎は謎のまま
ひやり、とする触感だけ残してすっと終る。
ものすごい怖いわけでもないのに、何かぞぞぞ。
ありがちでご都合主義のシメもなく
つまんない駄洒落のようなオチもなく。
昔話を淡々と語るような。
収録されている「置いてけ堀」(『三浦老人昔話』)は
実際そうだし。他に半七親分の事件の話も書いているから
そんな語り口が多いのだろう。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
宮部みゆきの本所の不思議譚などは、もしかしたら
岡本綺堂や鏡花の影響を受けているのでは、と
よく思うのだが・・・。どうだろう。
あとコミック作家の波津彬子さんの幻想譚が好きな方にも
かなりお薦めします。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
日本幻想文学集成にしても、世界幻想文学大系や
鏡花コレクション、探偵クラブに文学の冒険、
黄金の夜明け魔法大系、異貌の19世紀、
ドイツ・ロマン派全集、バベルの図書館。
もういろいろ〜。
図書刊行会のシリーズにはホントマニア向け?が多い。
少数の愛好者向けとでもいうのか。
タイトルを観ていると端から読みたくなる。
すぐ絶版になってしまうんだろうなあ。既に?かな。
公共図書館で根気強く借りるしかないかしらん。
著:岡本綺堂
編:種村季弘
国書刊行会
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
影を踏まれた女
魚妖
鰻に呪はれた男
猿の眼
蟹
黄い紙
火薬庫
穴
蛔虫
停車場の少女
兜
鎧櫃の血
置いてけ堀
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
岡本綺堂の幻想的な短編集。
『青蛙堂鬼談』『探偵夜話』『近代異妖編』などから。
怪異が現れても、謎は謎のまま
ひやり、とする触感だけ残してすっと終る。
ものすごい怖いわけでもないのに、何かぞぞぞ。
ありがちでご都合主義のシメもなく
つまんない駄洒落のようなオチもなく。
昔話を淡々と語るような。
収録されている「置いてけ堀」(『三浦老人昔話』)は
実際そうだし。他に半七親分の事件の話も書いているから
そんな語り口が多いのだろう。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
宮部みゆきの本所の不思議譚などは、もしかしたら
岡本綺堂や鏡花の影響を受けているのでは、と
よく思うのだが・・・。どうだろう。
あとコミック作家の波津彬子さんの幻想譚が好きな方にも
かなりお薦めします。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
日本幻想文学集成にしても、世界幻想文学大系や
鏡花コレクション、探偵クラブに文学の冒険、
黄金の夜明け魔法大系、異貌の19世紀、
ドイツ・ロマン派全集、バベルの図書館。
もういろいろ〜。
図書刊行会のシリーズにはホントマニア向け?が多い。
少数の愛好者向けとでもいうのか。
タイトルを観ていると端から読みたくなる。
すぐ絶版になってしまうんだろうなあ。既に?かな。
公共図書館で根気強く借りるしかないかしらん。
モンテ・クリスト伯 (下)
2005年4月16日 読了本
ISBN:4001145057 単行本(ソフトカバー) 2000/06 ¥840
『モンテ・クリスト伯(下)』
LE COMTE DE MONTE-CRISTO 1844-46
作:アレクサンドル・デュマ Alexandre Dumas
編訳:竹村 猛
岩波少年文庫505(岩波書店)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ラストの巻です。中下と早かった〜。
展開もたたみかけるようです。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
社交界ではアンドレア・カヴァルカンチ(ベネデット)の
華やかな噂で持ちきり。ヴィルフォールとダングラール夫人の
間に生まれた彼は、異父妹にあたるウジェニーに接近する。
その経歴が偽のものだとは露知らず、欲深なダングラールは
『過去』を共有するモルセールとの縁組よりも
家柄も財産も魅力的なカヴァルカンチとの婚約を望む。
肘鉄をくらわされたモルセール伯爵に追い討ちをかけ、
新聞にあるスキャンダルが掲載される。それには1822〜3年頃、
ジャニナの太守の信頼を裏切ってトルコに引き渡した
<フェルナン>というフランス軍士官について書かれていた。
モルセール伯爵のことであるとは明記されていなくとも
疑念を抱いたアルベールは友人の新聞記者ボーシャンを
問い詰める・・・・。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
アンドレアがダングラール男爵の娘に近づくことも
またモンテ・クリスト伯の計算だったとしたら
ちょっと陰険な復讐だなあ、と思いました。
計画としてはその前にアンドレアの正体がばれることも
充分考えられますが、実妹をたぶらかそうとするとは。
この翻訳では、アンドレアは終わりのほうで
実の父親のことは知っていましたが、母親については
名前を知らない、と言っていました。
もっとも実妹と結婚する前に、ウジェニーは女友達と
手に手をとって家出、自分は犯罪者として捕まってしまいます。
この本のウジェニー、コスプレも厭わない同人少女みたいです。
まだ男の人との恋愛より、ゲイジュツに愛。
女友達とべったり。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
やがて再び新聞記事になりジャニナで非道を行ったのが
アルベールの父親と暴露され、裏で糸を引いていたのが
モンテ・クリスト伯だとわかってしまうアルベール。
釈明を求めても返ってくるのは冷たい言葉。
激昂した彼は手袋を彼に投げつけようとするが
友人たちが止める。しかし伯は決闘することを承認する。
伯の正体に気付いていたメルセデスが
息子の命乞いに伯爵のもとへ訪れる。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ここで伯爵がかつての恋人メルセデスの母心に負け、
『殺さない』と言ってしまうがための苦悩もみどころ〜。
しかしこれで実際アルベールの命も助かったんでした。
伯爵、それでも復讐の仕上げは手を抜きません。
最後まで追い詰められる仇敵たち。
自分と息子のために次々と毒を使ってきたヴィルフォール夫人。
とうとう夫に裁きを下される。ここであまりにも悲劇的な破滅に
モンテ・クリスト伯も手を緩めるのか、それとも?
毒殺された(と思われた)ヴァランチーヌを思い切れず
絶望の淵を彷徨うマクシミリアン。伯爵に命を預けて
運命の日を待っていた。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
最後まで「次は?次どうなんの?」と思いながら一気読み。
冷酷だけど陰惨な殺戮をするわけではなく、
(結果死ぬようなことになっても)
モンテ・クリスト伯はただ<お膳立てしただけ>。
たいていは自分から罠にはまっていく。
牢獄の14年間はそれほどまでに苦しかったのかと
その執念、復讐心にも感心してしまう。
そこまで・・・と思うような破滅でも、仇敵になっている
人物たちが、あまり同情したくなるようなタイプに
描かれておらず。利己的、欲深で俗物な様子、むしろ
神の鉄槌を下されたように思わせているのではないか。
途中「神がつかわされた」みたいな表現(台詞)があるが
ちょっとだけイヤ。まぁ、モンテ「クリスト」だしなあ。
自業自得って人たちだし・・・。
巨万の富を手にした時点で、またチャンス得たのだから
もっと違う人生の楽しみ方もあったろうにと思っても
それじゃあ巌窟王の話にもなんにもなりゃしないのでした(笑)
せめてメルセデスが待ち続けていたらねー。
若い頃、フェルナンの求婚にたいして
『〜兵隊になったらあなたはわたしをどうしてくださるの。
財産もなく、あるものといったら朽ちかけたあばら屋ひとつの
あわれなみなしごのわたしを』
と返す場面があったので、待てなさそうだなあ、と思った。
出世して将来も困らなくなった求婚者の前で
死んだと聞かされている男を待ち続けるなんて。
それがどういう葛藤だったか、詳細は描かれないが
想像はつくだろう。
死んだ恋人を想い続けることばかりが美しさではないし
彼女は「裏切った」わけではなく、新しく人生をやり直して
息子にも豊かな生活にも恵まれた。
それを責められるだろうか。
死んだと聞かされるタイミングにもよるかなー。
牢屋に入って数年だったらちょっと早いのかなー。
巌窟王詳細年表でも作ろうかしら。
すっかりはまってしまいましたので、次回機会があれば
講談社の痛快シリーズや岩波文庫7分冊あたりを
ぜひ読んでみたいと思います。
『モンテ・クリスト伯(下)』
LE COMTE DE MONTE-CRISTO 1844-46
作:アレクサンドル・デュマ Alexandre Dumas
編訳:竹村 猛
岩波少年文庫505(岩波書店)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ラストの巻です。中下と早かった〜。
展開もたたみかけるようです。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
社交界ではアンドレア・カヴァルカンチ(ベネデット)の
華やかな噂で持ちきり。ヴィルフォールとダングラール夫人の
間に生まれた彼は、異父妹にあたるウジェニーに接近する。
その経歴が偽のものだとは露知らず、欲深なダングラールは
『過去』を共有するモルセールとの縁組よりも
家柄も財産も魅力的なカヴァルカンチとの婚約を望む。
肘鉄をくらわされたモルセール伯爵に追い討ちをかけ、
新聞にあるスキャンダルが掲載される。それには1822〜3年頃、
ジャニナの太守の信頼を裏切ってトルコに引き渡した
<フェルナン>というフランス軍士官について書かれていた。
モルセール伯爵のことであるとは明記されていなくとも
疑念を抱いたアルベールは友人の新聞記者ボーシャンを
問い詰める・・・・。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
アンドレアがダングラール男爵の娘に近づくことも
またモンテ・クリスト伯の計算だったとしたら
ちょっと陰険な復讐だなあ、と思いました。
計画としてはその前にアンドレアの正体がばれることも
充分考えられますが、実妹をたぶらかそうとするとは。
この翻訳では、アンドレアは終わりのほうで
実の父親のことは知っていましたが、母親については
名前を知らない、と言っていました。
もっとも実妹と結婚する前に、ウジェニーは女友達と
手に手をとって家出、自分は犯罪者として捕まってしまいます。
この本のウジェニー、コスプレも厭わない同人少女みたいです。
まだ男の人との恋愛より、ゲイジュツに愛。
女友達とべったり。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
やがて再び新聞記事になりジャニナで非道を行ったのが
アルベールの父親と暴露され、裏で糸を引いていたのが
モンテ・クリスト伯だとわかってしまうアルベール。
釈明を求めても返ってくるのは冷たい言葉。
激昂した彼は手袋を彼に投げつけようとするが
友人たちが止める。しかし伯は決闘することを承認する。
伯の正体に気付いていたメルセデスが
息子の命乞いに伯爵のもとへ訪れる。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ここで伯爵がかつての恋人メルセデスの母心に負け、
『殺さない』と言ってしまうがための苦悩もみどころ〜。
しかしこれで実際アルベールの命も助かったんでした。
伯爵、それでも復讐の仕上げは手を抜きません。
最後まで追い詰められる仇敵たち。
自分と息子のために次々と毒を使ってきたヴィルフォール夫人。
とうとう夫に裁きを下される。ここであまりにも悲劇的な破滅に
モンテ・クリスト伯も手を緩めるのか、それとも?
毒殺された(と思われた)ヴァランチーヌを思い切れず
絶望の淵を彷徨うマクシミリアン。伯爵に命を預けて
運命の日を待っていた。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
最後まで「次は?次どうなんの?」と思いながら一気読み。
冷酷だけど陰惨な殺戮をするわけではなく、
(結果死ぬようなことになっても)
モンテ・クリスト伯はただ<お膳立てしただけ>。
たいていは自分から罠にはまっていく。
牢獄の14年間はそれほどまでに苦しかったのかと
その執念、復讐心にも感心してしまう。
そこまで・・・と思うような破滅でも、仇敵になっている
人物たちが、あまり同情したくなるようなタイプに
描かれておらず。利己的、欲深で俗物な様子、むしろ
神の鉄槌を下されたように思わせているのではないか。
途中「神がつかわされた」みたいな表現(台詞)があるが
ちょっとだけイヤ。まぁ、モンテ「クリスト」だしなあ。
自業自得って人たちだし・・・。
巨万の富を手にした時点で、またチャンス得たのだから
もっと違う人生の楽しみ方もあったろうにと思っても
それじゃあ巌窟王の話にもなんにもなりゃしないのでした(笑)
せめてメルセデスが待ち続けていたらねー。
若い頃、フェルナンの求婚にたいして
『〜兵隊になったらあなたはわたしをどうしてくださるの。
財産もなく、あるものといったら朽ちかけたあばら屋ひとつの
あわれなみなしごのわたしを』
と返す場面があったので、待てなさそうだなあ、と思った。
出世して将来も困らなくなった求婚者の前で
死んだと聞かされている男を待ち続けるなんて。
それがどういう葛藤だったか、詳細は描かれないが
想像はつくだろう。
死んだ恋人を想い続けることばかりが美しさではないし
彼女は「裏切った」わけではなく、新しく人生をやり直して
息子にも豊かな生活にも恵まれた。
それを責められるだろうか。
死んだと聞かされるタイミングにもよるかなー。
牢屋に入って数年だったらちょっと早いのかなー。
巌窟王詳細年表でも作ろうかしら。
すっかりはまってしまいましたので、次回機会があれば
講談社の痛快シリーズや岩波文庫7分冊あたりを
ぜひ読んでみたいと思います。
モンテ・クリスト伯 (中)
2005年4月15日 読了本
ISBN:4001145049 単行本(ソフトカバー) 2000/06 ¥798
『モンテ・クリスト伯(中)』
LE COMTE DE MONTE-CRISTO 1844-46
作:アレクサンドル・デュマ Alexandre Dumas
編訳:竹村 猛
岩波少年文庫504(岩波書店)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
5月21日。エルデ街27番地、モルセール伯爵邸では
客人を迎える準備は出来ていた。
ローマで再会を約束したアルベールにモンテクリスト伯は
パリの社交界へ紹介されることを依頼していた。
アルベールはまず友人たちに彼を引き合わせる。
貴い奇人、モンテ・クリスト伯の噂の最中、かの人は
音もなく現れ、若者たちの視線を集めた。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
イタリアに一緒に旅行をしたフランツ。
彼は故デピネー将軍の息子で、ヴィルフォール検事の娘
ヴァランチーヌの婚約者である。
リュシアン・ドブレー、大臣秘書官。
ブロンド、色白で、落ち着いた灰色の瞳。
薄い冷ややかな唇をした背の高い青年。モノクルをつける。
ボーシャン、新聞記者。
『おそるべきペンの持ち主』
シャトー・ルノー、男爵。
頭から足の先まで寸分の隙のない青年貴族。
マクシミリヤン・モレル、アフリカ騎兵大尉。
鋭い目、額の広い、背の高い青年士官。
ルノーの友人で、かつてエドモン・ダンテスを
援ける為に奔走した船主モレルの息子。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
本の挿絵はとりあえず見ないことにして、
(ひげが!髪型が!とても青年に見えない・・・(笑))
今回はアニメーションとどのへんが違うのか
じっくり比べて楽しむことが出来ました。
フランツはほぼイメージ通り、
アルベールは原作を読んでまたアニメーションを
観返したら、何となく合致。
リュシアンは片眼鏡の秘書官、冷静沈着で
頭が切れる様子や、利益の為に女性を利用するあたり
見た目は堅い眼鏡君型のほうがいいな〜と思いましたが
アニメーションでは如何にも間男の雰囲気漂うデザインでした。
モレル大尉は実直そのものどっしり体型の体育会系でしたが
原作から受ける印象はもう少し繊細な気がしました。
この本だとダングラール男爵の娘ウジェニーは
アルベールと心を通わせるアニメーションのユージェニーと
違って、芸術にしか興味がなく、同じ芸術趣味の同性の友人と
いるほうが楽しいという素っ気無い娘になってました。
短縮版ですが、一度通して原作を読んだおかげで
またアニメーション版も面白く観ています。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
アルベールの両親に顔を合わせるモンテクリスト伯。
目の前にはかつての婚約者メルセデスと並んで
自分を陥れた男が富と偽りの名誉を手にしている。
アルベールの父親はモンテクリスト伯の正体には
まだ気付かず、朗らかに挨拶をして議会に出掛けていきますが
母親のメルセデスは何かを感じ取ったよう。
疑念を抱いたのか、早くも彼が誰かを悟ったのか。
場面ごとに登場人物の表情を活字から想像するのは面白い。
中巻では、アルベールの家族を始め、人脈を少しずつ広げ、
伯は次々と仇とその家族に近づき、罠を仕掛けていく。
また雇い入れた男の告白から、ヴィルフォール検事と
ダングラール男爵夫人の過去の情事と忌まわしい事件の詳細を知る。
この巻のラストではまるで劇場仕立ての如く
ある事実が明らかになり、悩んでいた恋人同士
(モレル大尉とヴァランチーヌ)が救われる場面は圧巻。
『モンテ・クリスト伯(中)』
LE COMTE DE MONTE-CRISTO 1844-46
作:アレクサンドル・デュマ Alexandre Dumas
編訳:竹村 猛
岩波少年文庫504(岩波書店)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
5月21日。エルデ街27番地、モルセール伯爵邸では
客人を迎える準備は出来ていた。
ローマで再会を約束したアルベールにモンテクリスト伯は
パリの社交界へ紹介されることを依頼していた。
アルベールはまず友人たちに彼を引き合わせる。
貴い奇人、モンテ・クリスト伯の噂の最中、かの人は
音もなく現れ、若者たちの視線を集めた。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
イタリアに一緒に旅行をしたフランツ。
彼は故デピネー将軍の息子で、ヴィルフォール検事の娘
ヴァランチーヌの婚約者である。
リュシアン・ドブレー、大臣秘書官。
ブロンド、色白で、落ち着いた灰色の瞳。
薄い冷ややかな唇をした背の高い青年。モノクルをつける。
ボーシャン、新聞記者。
『おそるべきペンの持ち主』
シャトー・ルノー、男爵。
頭から足の先まで寸分の隙のない青年貴族。
マクシミリヤン・モレル、アフリカ騎兵大尉。
鋭い目、額の広い、背の高い青年士官。
ルノーの友人で、かつてエドモン・ダンテスを
援ける為に奔走した船主モレルの息子。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
本の挿絵はとりあえず見ないことにして、
(ひげが!髪型が!とても青年に見えない・・・(笑))
今回はアニメーションとどのへんが違うのか
じっくり比べて楽しむことが出来ました。
フランツはほぼイメージ通り、
アルベールは原作を読んでまたアニメーションを
観返したら、何となく合致。
リュシアンは片眼鏡の秘書官、冷静沈着で
頭が切れる様子や、利益の為に女性を利用するあたり
見た目は堅い眼鏡君型のほうがいいな〜と思いましたが
アニメーションでは如何にも間男の雰囲気漂うデザインでした。
モレル大尉は実直そのものどっしり体型の体育会系でしたが
原作から受ける印象はもう少し繊細な気がしました。
この本だとダングラール男爵の娘ウジェニーは
アルベールと心を通わせるアニメーションのユージェニーと
違って、芸術にしか興味がなく、同じ芸術趣味の同性の友人と
いるほうが楽しいという素っ気無い娘になってました。
短縮版ですが、一度通して原作を読んだおかげで
またアニメーション版も面白く観ています。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
アルベールの両親に顔を合わせるモンテクリスト伯。
目の前にはかつての婚約者メルセデスと並んで
自分を陥れた男が富と偽りの名誉を手にしている。
アルベールの父親はモンテクリスト伯の正体には
まだ気付かず、朗らかに挨拶をして議会に出掛けていきますが
母親のメルセデスは何かを感じ取ったよう。
疑念を抱いたのか、早くも彼が誰かを悟ったのか。
場面ごとに登場人物の表情を活字から想像するのは面白い。
中巻では、アルベールの家族を始め、人脈を少しずつ広げ、
伯は次々と仇とその家族に近づき、罠を仕掛けていく。
また雇い入れた男の告白から、ヴィルフォール検事と
ダングラール男爵夫人の過去の情事と忌まわしい事件の詳細を知る。
この巻のラストではまるで劇場仕立ての如く
ある事実が明らかになり、悩んでいた恋人同士
(モレル大尉とヴァランチーヌ)が救われる場面は圧巻。
モンテ・クリスト伯 (上)
2005年4月14日 読了本
ISBN:4001145030 単行本(ソフトカバー) 2000/06 ¥798
『モンテ・クリスト伯(上)』
LE COMTE DE MONTE-CRISTO 1844-46
作:アレクサンドル・デュマ Alexandre Dumas
編訳:竹村 猛
岩波少年文庫503(岩波書店)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
美しい婚約者との結婚を目前に、時期船長と噂される
若きエドモン・ダンテスは無実の罪で捕らえられる。
政局が安定しないフランス、王党派とボナパルト党が
水面下で火花を散らしていた19世紀初頭のことである。
彼を密告で陥れたのは恋敵と、職場の同僚だった。
前途を約束されたまだ二十歳にも満たない青年を妬み
ダングラールはダンテスの婚約者に激しく恋心を募らせている
フェルナンという若者をそそのかした。
また捕縛されたダンテスに事件のあらましを尋ねた検事が
ヴィルフォールであったことが、彼の不幸を決定的にした。
ヴィルフォールの父はボナパルト党であり、
このたびダンテスが巻き添えになった事件に深く関わっていた。
自分と父親を守るために検事はダンテスを犠牲にしたのだ。
かくしてダンテスは洞窟の牢獄<イフの城砦>に10年以上も
閉じ込められることとなった。
絶望の中で出会った博識の司祭ファリアは、ダンテスに希望と
生きる力を与えたのだが、同時に事件を推理したことにより
図らずも復讐の炎を燃え立たせることになった。
ダンテスは司祭より多くの知識を教わり、
やがて師の死を迎えて後、脱走に成功する。
その心には復讐の誓いと、莫大な宝の在り処を抱いて・・。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
春まで放映していたアニメーションが綺麗だったため
原作を探していました。
子供の頃は図書館の児童書で『巌窟王』のタイトルでも
見かけました。モンテ・クリスト伯のことだったんですよね〜。
今頃になってそういえばそうだったと思い出すしまつ。
他の世界名作と同様、こちらもちゃんと読んだ事はなく
今回、大人買いすることになりました。
つーても新書三冊、短縮版です。
少年少女向けの本なら図書館に行けば借りられるのに
辛抱できずにすぐ買っちゃうあたり気が短いなあ、と思う。
でも思ったよりずっと面白くて上巻も一気読み。
週末にかけて中下と読むことができたらいいなあ。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
特殊なテクスチャーを使ったアニメーション
『巌窟王』ではアルベールがメインになっていましたが
こちらの新書訳で読む限り、アニメ作品のほうの青年とは
多少イメージが違いました。
本のなかの時代がかった細かい挿絵も、
それだけで見るぶんには興味深いと思いますが、今回の場合、
イメージが崩れるからヤメテ〜な絵柄でございました。
しかし、翻訳は読みやすいし、なんたって面白い。
『モンテ・クリスト伯(上)』
LE COMTE DE MONTE-CRISTO 1844-46
作:アレクサンドル・デュマ Alexandre Dumas
編訳:竹村 猛
岩波少年文庫503(岩波書店)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
美しい婚約者との結婚を目前に、時期船長と噂される
若きエドモン・ダンテスは無実の罪で捕らえられる。
政局が安定しないフランス、王党派とボナパルト党が
水面下で火花を散らしていた19世紀初頭のことである。
彼を密告で陥れたのは恋敵と、職場の同僚だった。
前途を約束されたまだ二十歳にも満たない青年を妬み
ダングラールはダンテスの婚約者に激しく恋心を募らせている
フェルナンという若者をそそのかした。
また捕縛されたダンテスに事件のあらましを尋ねた検事が
ヴィルフォールであったことが、彼の不幸を決定的にした。
ヴィルフォールの父はボナパルト党であり、
このたびダンテスが巻き添えになった事件に深く関わっていた。
自分と父親を守るために検事はダンテスを犠牲にしたのだ。
かくしてダンテスは洞窟の牢獄<イフの城砦>に10年以上も
閉じ込められることとなった。
絶望の中で出会った博識の司祭ファリアは、ダンテスに希望と
生きる力を与えたのだが、同時に事件を推理したことにより
図らずも復讐の炎を燃え立たせることになった。
ダンテスは司祭より多くの知識を教わり、
やがて師の死を迎えて後、脱走に成功する。
その心には復讐の誓いと、莫大な宝の在り処を抱いて・・。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
春まで放映していたアニメーションが綺麗だったため
原作を探していました。
子供の頃は図書館の児童書で『巌窟王』のタイトルでも
見かけました。モンテ・クリスト伯のことだったんですよね〜。
今頃になってそういえばそうだったと思い出すしまつ。
他の世界名作と同様、こちらもちゃんと読んだ事はなく
今回、大人買いすることになりました。
つーても新書三冊、短縮版です。
少年少女向けの本なら図書館に行けば借りられるのに
辛抱できずにすぐ買っちゃうあたり気が短いなあ、と思う。
でも思ったよりずっと面白くて上巻も一気読み。
週末にかけて中下と読むことができたらいいなあ。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
特殊なテクスチャーを使ったアニメーション
『巌窟王』ではアルベールがメインになっていましたが
こちらの新書訳で読む限り、アニメ作品のほうの青年とは
多少イメージが違いました。
本のなかの時代がかった細かい挿絵も、
それだけで見るぶんには興味深いと思いますが、今回の場合、
イメージが崩れるからヤメテ〜な絵柄でございました。
しかし、翻訳は読みやすいし、なんたって面白い。
大江戸テクノロジー事情
2005年4月12日 読了本
ISBN:4061859404 文庫 1995/05 ¥680
著:石川 英輔
講談社文庫(講談社)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
部分的には正しいが・・・・
大小暦
和算
時刻と時計
からくり
富士塚
錦絵
銃と刀
天文学
馬
錠と鍵
花火
朝顔
もう一つの合理性
対談 江戸の科学技術観を探る(中村桂子・石川英輔)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
モノクロの文庫本にこれだけ口絵を載せた編集サイドの
ご苦労がしのばれる(笑)
カラー/もう少し拡大した図で見られたら良かったのだが
カラー刷や写真図鑑をメインとしない文庫なのだから
仕方ないかもしれない。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
科学技術に頼った現代社会(書かれた1990年代はじめ)
を『累積による誤謬』とし、江戸時代日本人の先祖たちが
築いた文化、技術を振り返る必要を説く。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
著者は近代化に遅れた知識や技術について、
娯楽や趣味の域から発展しなかった技術について
すべて良しとしているわけではない。
だが、やみくもに西欧列強諸国を真似した上で
どんな国になってきたのか、つくづく考えさせられる。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
現代の便利な生活から、昔に戻れやしないとわかっていても
つい江戸の暮らしにうらやましさを感じさせるような
面白いものがいろいろ。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
歴史を遡り研究した本を読みながら
よく思うことは、どれが本当だったか、やっぱり
わからないのだな、ということ。
歴史上のことは全て残された史料に基づく推論でしかない。
残っている物質物品については、今現在正確に近いと言われる
「科学的な」方法を使って、当時のあらゆる資料と合わせて、
より真実に近づいた推定ができるだろう。
しかし、人の書いた文献を中心に頼りに推測したことは
たとえ定説であっても、その文献を最初に取り上げた人の
考えがまず上がるのだと思う。
『実際この目でみたわけでなし』って言葉は
歴史を研究する上で味気ないし言っても仕方ない。
だが、どれをその時代の「自分自身の定説」にするかは
毎回いろんな本によってぐらぐらする。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
書いてあることがこのあいだ読んだものと違う、
テレビの歴史ドキュメンタリーの説明と違う、
小説やドラマじゃない研究書や論文なのに
作者の推論、思い込み、フィクションなのだろうか・・・と
時たま思うことがある。
それは統計調査やアンケートなどでも思う。
統計学はやってないのでよくわからない。
国民これだけでこういう項目のアンケートなら
何千人調べればほぼこれくらいの精度の結果が出る、とか
よくわからない。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
自分で調べ物をするとき、困るだろうこと。
Aをやっていた人はこの時代たくさんいた。
調べたらそういう記述の文献が10も出てきた。
たくさんが100人のうちの10人か
1万人のうちの10人かわからなければ
その時代の「たくさん」はわからない。
Aは流行で、文章に残したくなる出来事かもしれない
文章に残すようなタイプの人がよくやることかもしれない
例えば地域が限られていて、今調べたら戦時中も焼け残った為
資料が他より残っていた・・・ってことはないのか。
何かを調べようと思ったら、ある程度仮説を立てて
それを証明するように追って行くほうが
絞ってできるから、まず推論があるのではないか。
推論に囚われるが故に、調べることは無意識に
立証できるようなものを選んでいないか。
とか何とか。
どうやって調べていってるんだろう・・・。
私の場合、溢れる資料の山に埋もれて、
何でもかんでも、まとめ切れないのだ。
著:石川 英輔
講談社文庫(講談社)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
部分的には正しいが・・・・
大小暦
和算
時刻と時計
からくり
富士塚
錦絵
銃と刀
天文学
馬
錠と鍵
花火
朝顔
もう一つの合理性
対談 江戸の科学技術観を探る(中村桂子・石川英輔)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
モノクロの文庫本にこれだけ口絵を載せた編集サイドの
ご苦労がしのばれる(笑)
カラー/もう少し拡大した図で見られたら良かったのだが
カラー刷や写真図鑑をメインとしない文庫なのだから
仕方ないかもしれない。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
科学技術に頼った現代社会(書かれた1990年代はじめ)
を『累積による誤謬』とし、江戸時代日本人の先祖たちが
築いた文化、技術を振り返る必要を説く。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
著者は近代化に遅れた知識や技術について、
娯楽や趣味の域から発展しなかった技術について
すべて良しとしているわけではない。
だが、やみくもに西欧列強諸国を真似した上で
どんな国になってきたのか、つくづく考えさせられる。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
現代の便利な生活から、昔に戻れやしないとわかっていても
つい江戸の暮らしにうらやましさを感じさせるような
面白いものがいろいろ。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
歴史を遡り研究した本を読みながら
よく思うことは、どれが本当だったか、やっぱり
わからないのだな、ということ。
歴史上のことは全て残された史料に基づく推論でしかない。
残っている物質物品については、今現在正確に近いと言われる
「科学的な」方法を使って、当時のあらゆる資料と合わせて、
より真実に近づいた推定ができるだろう。
しかし、人の書いた文献を中心に頼りに推測したことは
たとえ定説であっても、その文献を最初に取り上げた人の
考えがまず上がるのだと思う。
『実際この目でみたわけでなし』って言葉は
歴史を研究する上で味気ないし言っても仕方ない。
だが、どれをその時代の「自分自身の定説」にするかは
毎回いろんな本によってぐらぐらする。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
書いてあることがこのあいだ読んだものと違う、
テレビの歴史ドキュメンタリーの説明と違う、
小説やドラマじゃない研究書や論文なのに
作者の推論、思い込み、フィクションなのだろうか・・・と
時たま思うことがある。
それは統計調査やアンケートなどでも思う。
統計学はやってないのでよくわからない。
国民これだけでこういう項目のアンケートなら
何千人調べればほぼこれくらいの精度の結果が出る、とか
よくわからない。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
自分で調べ物をするとき、困るだろうこと。
Aをやっていた人はこの時代たくさんいた。
調べたらそういう記述の文献が10も出てきた。
たくさんが100人のうちの10人か
1万人のうちの10人かわからなければ
その時代の「たくさん」はわからない。
Aは流行で、文章に残したくなる出来事かもしれない
文章に残すようなタイプの人がよくやることかもしれない
例えば地域が限られていて、今調べたら戦時中も焼け残った為
資料が他より残っていた・・・ってことはないのか。
何かを調べようと思ったら、ある程度仮説を立てて
それを証明するように追って行くほうが
絞ってできるから、まず推論があるのではないか。
推論に囚われるが故に、調べることは無意識に
立証できるようなものを選んでいないか。
とか何とか。
どうやって調べていってるんだろう・・・。
私の場合、溢れる資料の山に埋もれて、
何でもかんでも、まとめ切れないのだ。
ハーメルンの笛吹き男―伝説とその世界
2005年4月1日 読了本
ISBN:4480022724 1988/12 ¥756
著:阿部 謹也
ちくま文庫(筑摩書房)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
○第一部 笛吹き男伝説の成立
はじめに
第一章 笛吹き男伝説の原型
グリムのドイツ伝説集
鼠捕り男のモチーフの出現
最古の史料を求めて
失踪した日付、人数、場所
第二章 1284年6月26日の出来事(→原文漢数字)
さまざまな解釈をこえて
リューネブルク手書本の信憑性
ハーメルン市の成立事情
ハーメルン市内の散策
ゼデミューンデの戦とある伝説解釈
「都市の空気は自由にする」か
ハーメルンの住民たち
解放と自治の実情
第三章 植民者の希望と現実
東ドイツ植民者の心情
失踪を目撃したリューデ氏の母
植民請負人と集団結婚の背景
子供たちは何処へ行ったのか?
ヴァン理論の欠陥と魅力
ドバーディンの植民遭難説
第四章 経済繁栄の蔭で
中世都市の下層民
賤民=名誉をもたない者たち
寡婦と子供たちの受難
子供の十字軍・舞踏更新・練り歩き
四旬節とヨハネ祭
ヴォエラー説にみる<笛吹き男>
第五章 遍歴芸人たちの社会的地位
放浪者の中の遍歴楽師
差別する側の怯え
「名誉を回復した」楽師たち
漂泊の楽師たち
○第二部 笛吹き男伝説の変貌
第一章 笛吹き男伝説から鼠捕り男伝説へ
飢饉と疫病=不幸な記憶
『ツァイトロースの日記』
権威づけられる伝説
<笛吹き男>から<鼠捕り男>へ
類似した鼠捕り男の伝説
鼠虫害駆除対策
両伝説結合の条件と背景
伝説に振廻されたハーメルン市
第二章 近代的伝説研究の序章
伝説の普及と「研究」
ライプニッツと啓蒙思想
ローマン主義の解釈とその功罪
第三章 現代に生きる伝説の貌
シンボルとしての<笛吹き男>
伝説の中を生きる老学者
シュパヌートとヴァンの出会い
あとがき
解説 泉のような明晰 石牟礼道子
参考文献
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
私のうろ覚えでの笛吹き男伝説はこうだ。
大量の鼠に困ったハーメルンの大人たちが
奇妙な格好(扮装)をした笛吹きに退治を依頼した。
笛吹きが笛を吹くと男のもとにネズミたちが集まり
付き従う。男は水辺までネズミたちを引き寄せておいて
溺れさせ、見事に街からネズミを追い払う。
男は約束の代価を要求するが、街の大人たちは
そんなことは無かったように冷たくあしらう。
笛吹き男は報復に街の子供たちのほとんどを楽の音とともに
連れ出し、二度と戻ってこなかった・・・。
笛の音にふらふらと引き寄せられたのか
楽しくなってついて行ったのかどっちだろう。
私の昔から抱いていたイメージでは、
子供たちに慕われる大道芸人のような男なのだが
街の大人たちが約束を破ったことに「怒って」
その「報復として」子供を攫う、というちょっと
恐ろしげな豹変振りが不気味。
子供たちは辛く哀しい場所にいくんじゃなくて
わからずやの大人たちを置いて
楽しく明るい新天地に行ってしまい、いつまでも
幸せに暮らしましたというようなオチなら
遠い外国の昔話を、いつまでもこんな、シコリのように
後味の悪さを、覚えているもんだろうか・・?
ハーメルンといえば笛吹き男。
すぐこのイメージが浮かぶ。
(ブレーメンなら音楽隊だなぁ(笑))
伝説はどうして起こったのか。
なぜ<笛吹き男>なのか。
人攫い、事故や災害、疫病、戦争。
大量殺人、儀式の犠牲、人外のものの存在、
超自然の力、タイムトリップ、などなど。
様々な理由をこじつけることが出来るが
肉親と離れ、それが伝説になるほど街に遺るのは
他に何があるだろう。
同じような疑問をふと持つ人がいたら
ぜひこの本をお薦めしたいです。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ネズミ捕りの話が後から付け加えられた(らしい)ことは知らなかった。考えられてきた原因のひとつに東ドイツへの移住があること、子供の十字軍のこと、教会の圧力や伝説の利用と普及など中世の歴史事情がたくさん。特に前半はまるで推理小説のようにわくわくしながら読んだ。
著:阿部 謹也
ちくま文庫(筑摩書房)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
○第一部 笛吹き男伝説の成立
はじめに
第一章 笛吹き男伝説の原型
グリムのドイツ伝説集
鼠捕り男のモチーフの出現
最古の史料を求めて
失踪した日付、人数、場所
第二章 1284年6月26日の出来事(→原文漢数字)
さまざまな解釈をこえて
リューネブルク手書本の信憑性
ハーメルン市の成立事情
ハーメルン市内の散策
ゼデミューンデの戦とある伝説解釈
「都市の空気は自由にする」か
ハーメルンの住民たち
解放と自治の実情
第三章 植民者の希望と現実
東ドイツ植民者の心情
失踪を目撃したリューデ氏の母
植民請負人と集団結婚の背景
子供たちは何処へ行ったのか?
ヴァン理論の欠陥と魅力
ドバーディンの植民遭難説
第四章 経済繁栄の蔭で
中世都市の下層民
賤民=名誉をもたない者たち
寡婦と子供たちの受難
子供の十字軍・舞踏更新・練り歩き
四旬節とヨハネ祭
ヴォエラー説にみる<笛吹き男>
第五章 遍歴芸人たちの社会的地位
放浪者の中の遍歴楽師
差別する側の怯え
「名誉を回復した」楽師たち
漂泊の楽師たち
○第二部 笛吹き男伝説の変貌
第一章 笛吹き男伝説から鼠捕り男伝説へ
飢饉と疫病=不幸な記憶
『ツァイトロースの日記』
権威づけられる伝説
<笛吹き男>から<鼠捕り男>へ
類似した鼠捕り男の伝説
鼠虫害駆除対策
両伝説結合の条件と背景
伝説に振廻されたハーメルン市
第二章 近代的伝説研究の序章
伝説の普及と「研究」
ライプニッツと啓蒙思想
ローマン主義の解釈とその功罪
第三章 現代に生きる伝説の貌
シンボルとしての<笛吹き男>
伝説の中を生きる老学者
シュパヌートとヴァンの出会い
あとがき
解説 泉のような明晰 石牟礼道子
参考文献
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
私のうろ覚えでの笛吹き男伝説はこうだ。
大量の鼠に困ったハーメルンの大人たちが
奇妙な格好(扮装)をした笛吹きに退治を依頼した。
笛吹きが笛を吹くと男のもとにネズミたちが集まり
付き従う。男は水辺までネズミたちを引き寄せておいて
溺れさせ、見事に街からネズミを追い払う。
男は約束の代価を要求するが、街の大人たちは
そんなことは無かったように冷たくあしらう。
笛吹き男は報復に街の子供たちのほとんどを楽の音とともに
連れ出し、二度と戻ってこなかった・・・。
笛の音にふらふらと引き寄せられたのか
楽しくなってついて行ったのかどっちだろう。
私の昔から抱いていたイメージでは、
子供たちに慕われる大道芸人のような男なのだが
街の大人たちが約束を破ったことに「怒って」
その「報復として」子供を攫う、というちょっと
恐ろしげな豹変振りが不気味。
子供たちは辛く哀しい場所にいくんじゃなくて
わからずやの大人たちを置いて
楽しく明るい新天地に行ってしまい、いつまでも
幸せに暮らしましたというようなオチなら
遠い外国の昔話を、いつまでもこんな、シコリのように
後味の悪さを、覚えているもんだろうか・・?
ハーメルンといえば笛吹き男。
すぐこのイメージが浮かぶ。
(ブレーメンなら音楽隊だなぁ(笑))
伝説はどうして起こったのか。
なぜ<笛吹き男>なのか。
人攫い、事故や災害、疫病、戦争。
大量殺人、儀式の犠牲、人外のものの存在、
超自然の力、タイムトリップ、などなど。
様々な理由をこじつけることが出来るが
肉親と離れ、それが伝説になるほど街に遺るのは
他に何があるだろう。
同じような疑問をふと持つ人がいたら
ぜひこの本をお薦めしたいです。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ネズミ捕りの話が後から付け加えられた(らしい)ことは知らなかった。考えられてきた原因のひとつに東ドイツへの移住があること、子供の十字軍のこと、教会の圧力や伝説の利用と普及など中世の歴史事情がたくさん。特に前半はまるで推理小説のようにわくわくしながら読んだ。
ISBN:4001145316 単行本(ソフトカバー) 2000/11 ¥882
『時の旅人』 A TRAVELLER IN TIME
著:アリソン・アトリー Alison Uttley
挿絵:フェイス・ジェイクス(1978年パフィン版による)
底本:A Traveller in Time(Faber and Faber,1965)
訳:松野 正子
岩波少年文庫531(岩波書店)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
身体の弱いペネロピーは療養のため大おばの住む
サッカーズ農場を姉兄とともに訪れる。
古くより貴族に仕え、農場を守り続けてきた先祖のぬくもりが
ペネロピーを暖かく迎えてくれる。
以前からペネロピーには何かが「視えた」。
鏡の中に映し出される青白い顔をした「私」が
ふと違う女の子に見えるとき、ペネロピーは
不思議な想いに囚われていた。
大おばのティッシーはペネロピーがが「視えた」ことについて
誰にも言ってはいけないという。
昔一族にそんな人間がいたことをティッシーおばさんは
知っていたのだ。
あるときは屋敷の二階で、階段で
彼女は過去のひとびとの暮らしを垣間見る。
それはだんだんとはっきりしていき
やがてその中に溶け込んで行くように
ペネロピーは16世紀に迷い込む・・・。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
スコットランドの女王メアリ・スチュアートは
幽閉中何度か支持者によって脱走を試みたという。
女王を逃がす計画に加担し、絞首台に上った
と言われる貴族アンソニー・バビントンの荘園に
時を越えて現れた少女。
自分の置かれている状況をまだ飲み込めないペネロピーは
自分の先祖にあたる女性シスリーに会う事ができる。
ティッシーおばのような人のいい彼女は
屋敷の台所を一手に預かる女中頭のような存在である。
ペネロピーは16世紀で路頭に迷うことなく
ひとまず落ち着く先をみつけた。
16世紀の人たちにとってペネロピーは異質の存在だが
貴族のアンソニーや弟のフランシス、女主人たちにも
気に入られ、時を過ごしていく。
しかしその間も時折現代に戻り、また過去に彷徨うという
繰り返しがあった。不思議なことに過去の時間は進んでも
現代の時間は一秒も進んでいなかった。
やがてペネロピーはアンソニーたちの想いと同調しつつ
メアリ逃亡の計画に巻き込まれていく・・・。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
この本は中学生以上推奨らしい。
主人公がだいたい11〜14歳の間のお話とのことで
同じ位の年頃の女の子にぜひ読んで欲しいと思った。
というより、自分がその頃読んでみたかった(笑)
時駆けモノは古今東西年齢幅広く存在するが
これはかなり面白いし、前述したことはともかく
幅広い年齢層の人にお薦めしたい。
農場の自然や人の暮らしぶり、屋敷の内部、
料理、した働きから貴族まで服装や趣味・・・
こまごまとした描写が素晴らしい。
文章や単語から想像するだけでは実物には及ばないので
その時代の調度品や服を見てみたいなと思う。
またペネロピーの淡い恋心が少しずつわかるくらいの
控えめなエピソードがとても良い。
本人がなかなか自分の気持ちに気付かないあたり
思春期の女の子のイメージとして懐かしく思う。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
襟巻きトカゲのよーな立て衿と
ちょーちんブルマーな当時の貴族の男性の服装を
想像するとどうも崩れていくが・・・。
登場人物の青年少年も魅力的に描かれている。
「ロマンスもの」と冠をつけるほど俗ではなく
その手の場面はほのか〜に薫るとこがいいし。
ラストも良かった。と私は思う。
タイムスリップが前面に出たSFファンタジーでも
重厚な歴史ドラマでもなく。
子供たちに、若い人に読んで欲しいって想いから
丁寧に描かれた物語は、かえって大人心にも響くと思う。
あと上手な作家さんがコミックや
アニメーションにしてくれたらいいな〜と思いました。
ペネロピーが過去と現代を行き来するとき
「彷徨いこむ」様子は映像的にも面白いだろう。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
翻訳は読みやすかったが、よくある台詞回しのときの
「訛り」「語尾」、高貴な人の話し方は
イメージするの難しそうだと思った。
昔の日本のお姫様のイメージのように仰々しかったり
下働きのひとたちの訛りを「〜するだ」「〜けんど」とか
どこの方言が混ざってるのかまぜこぜ語尾にしたり。
英語など外国語の、地域による「訛り」を訳するとき
素朴な田舎のひとたちの話し方を工夫するのは
イメージを湧きやすくするために必要だとは思うのだが。
関西弁をはじめ、「〜じゃけん」「しとっと」なんて
台詞があったら違和感があるんだろうけど・・・。
関東北部や東北やらのコトバを田舎言葉に混ぜ込んで
適当に「すっぺ」「だっぺ」とやるのはやめれ。と思う。
他に代替案は?
・・・・無いかなあ・・・。
『時の旅人』 A TRAVELLER IN TIME
著:アリソン・アトリー Alison Uttley
挿絵:フェイス・ジェイクス(1978年パフィン版による)
底本:A Traveller in Time(Faber and Faber,1965)
訳:松野 正子
岩波少年文庫531(岩波書店)
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
身体の弱いペネロピーは療養のため大おばの住む
サッカーズ農場を姉兄とともに訪れる。
古くより貴族に仕え、農場を守り続けてきた先祖のぬくもりが
ペネロピーを暖かく迎えてくれる。
以前からペネロピーには何かが「視えた」。
鏡の中に映し出される青白い顔をした「私」が
ふと違う女の子に見えるとき、ペネロピーは
不思議な想いに囚われていた。
大おばのティッシーはペネロピーがが「視えた」ことについて
誰にも言ってはいけないという。
昔一族にそんな人間がいたことをティッシーおばさんは
知っていたのだ。
あるときは屋敷の二階で、階段で
彼女は過去のひとびとの暮らしを垣間見る。
それはだんだんとはっきりしていき
やがてその中に溶け込んで行くように
ペネロピーは16世紀に迷い込む・・・。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
スコットランドの女王メアリ・スチュアートは
幽閉中何度か支持者によって脱走を試みたという。
女王を逃がす計画に加担し、絞首台に上った
と言われる貴族アンソニー・バビントンの荘園に
時を越えて現れた少女。
自分の置かれている状況をまだ飲み込めないペネロピーは
自分の先祖にあたる女性シスリーに会う事ができる。
ティッシーおばのような人のいい彼女は
屋敷の台所を一手に預かる女中頭のような存在である。
ペネロピーは16世紀で路頭に迷うことなく
ひとまず落ち着く先をみつけた。
16世紀の人たちにとってペネロピーは異質の存在だが
貴族のアンソニーや弟のフランシス、女主人たちにも
気に入られ、時を過ごしていく。
しかしその間も時折現代に戻り、また過去に彷徨うという
繰り返しがあった。不思議なことに過去の時間は進んでも
現代の時間は一秒も進んでいなかった。
やがてペネロピーはアンソニーたちの想いと同調しつつ
メアリ逃亡の計画に巻き込まれていく・・・。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
この本は中学生以上推奨らしい。
主人公がだいたい11〜14歳の間のお話とのことで
同じ位の年頃の女の子にぜひ読んで欲しいと思った。
というより、自分がその頃読んでみたかった(笑)
時駆けモノは古今東西年齢幅広く存在するが
これはかなり面白いし、前述したことはともかく
幅広い年齢層の人にお薦めしたい。
農場の自然や人の暮らしぶり、屋敷の内部、
料理、した働きから貴族まで服装や趣味・・・
こまごまとした描写が素晴らしい。
文章や単語から想像するだけでは実物には及ばないので
その時代の調度品や服を見てみたいなと思う。
またペネロピーの淡い恋心が少しずつわかるくらいの
控えめなエピソードがとても良い。
本人がなかなか自分の気持ちに気付かないあたり
思春期の女の子のイメージとして懐かしく思う。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
襟巻きトカゲのよーな立て衿と
ちょーちんブルマーな当時の貴族の男性の服装を
想像するとどうも崩れていくが・・・。
登場人物の青年少年も魅力的に描かれている。
「ロマンスもの」と冠をつけるほど俗ではなく
その手の場面はほのか〜に薫るとこがいいし。
ラストも良かった。と私は思う。
タイムスリップが前面に出たSFファンタジーでも
重厚な歴史ドラマでもなく。
子供たちに、若い人に読んで欲しいって想いから
丁寧に描かれた物語は、かえって大人心にも響くと思う。
あと上手な作家さんがコミックや
アニメーションにしてくれたらいいな〜と思いました。
ペネロピーが過去と現代を行き来するとき
「彷徨いこむ」様子は映像的にも面白いだろう。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
翻訳は読みやすかったが、よくある台詞回しのときの
「訛り」「語尾」、高貴な人の話し方は
イメージするの難しそうだと思った。
昔の日本のお姫様のイメージのように仰々しかったり
下働きのひとたちの訛りを「〜するだ」「〜けんど」とか
どこの方言が混ざってるのかまぜこぜ語尾にしたり。
英語など外国語の、地域による「訛り」を訳するとき
素朴な田舎のひとたちの話し方を工夫するのは
イメージを湧きやすくするために必要だとは思うのだが。
関西弁をはじめ、「〜じゃけん」「しとっと」なんて
台詞があったら違和感があるんだろうけど・・・。
関東北部や東北やらのコトバを田舎言葉に混ぜ込んで
適当に「すっぺ」「だっぺ」とやるのはやめれ。と思う。
他に代替案は?
・・・・無いかなあ・・・。
『桜の文学史』
ISBN:402260641X
著:小川 和佑
朝日文庫(朝日新聞社) 1991/03 ¥479
目次
1 さくら讃歌=プロローグ
日本の春
≪桜の樹の下には屍体が埋まってゐる!≫
さまざまのさくら
2 古代のさくら=飛鳥・奈良時代
秋に咲くさくら―『日本書紀』のさくら
さくらの歌物語
「桜華」をめぐって
万葉のさくら
桜児説話
平城京のさくら
3 王朝絵巻のさくら=平安時代I
さくらの歌―平安京の春
憧れと郷愁の花
散りゆくさくら
さくらの物語―伊勢・源氏など
『古事談』と南殿のさくら
4 薄命に咲く=平安時代II
移りゆく時代に
武門のさくら
さくらと吉野信仰
薄明に咲く―桜町中納言と泰山府君―『平家物語』のさくら
5 さくら美の完成者たち=鎌倉時代
唯美者たちのさくら観
西行桜―シダレの可憐さ
さくらの唯美者
東国のさくら―実朝
定家・そのさくら観
6 さくらのドラマツルギー=室町時代
室町さくら文化前史
常照皇寺の御車返し―里桜花開く
『花筐』・甦る王朝のさくら
継体伝説と淡墨桜
7 聖から俗へ=桃山時代
広がるさくら美の波紋
『閑吟集』の風流
醍醐の花宴―さくら観の転換
8 新しいさくら文化の開花=江戸時代
生活文化のさくら
『江戸名所花暦』
さくら図鑑の流行
江戸のさくら流行―芭蕉のさくら
蕪村・一茶―天明のさくら
攘夷と「国華」―思想化するさくら
9 文明開化とさくら=明治時代
さくらが変わる―ソメイヨシノの出現
文明開化とさくら
明治の花見―ベルツの日記から
ハーンの『怪談』―不思議なさくらに因む物語
散る花といのち―さくら観を変えた思想
祇園のさくら―吉井勇の「祇園冊子」
新体詩人たちのさくら観
10 さくらの歌びとたち=大正時代
さくらの歌びとたち
白秋・空穂・迢空
朔太郎・犀星のさくら
11 昭和文学の桜譜=昭和時代I
死のさくら―梶井基次郎
咲き極まるさくら―三好達治・谷崎潤一郎
坂口安吾『桜の森の満開の下』―さくらの復権
石川淳の桜鬼―『修羅』中世の物語
現代詩のさくら
12 現代文学に咲く=昭和時代II
浪曼派のさくら―五味康祐のさくら
さくらの復興―水上勉『桜守』
宇野千代の『淡墨の桜』
惑いの花―渡辺淳一の『桜の樹の下で』
終章・中村真一郎のさくら愛―『雲のゆき来』『美神との戯れ』
日本各地のさくらの種類・名桜名所10選・日本のさくら一覧
あとがき
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
・古典から現代まで『文学』に観るさくら、さくら観。
文学者たちの目に映るさくら。
愛して語る、評する。
・毎年季節になると静かに流行る「さくら」をテーマにした
今の歌を、著者はどう思うか訊いてみたい。
・著者が本居宣長のさくら観がキライなのはよくわかった。
「彼は詩的想像を全くわかってない」
「彼のさくら愛はきわめて視野の狭い強烈な自己愛の愛であった」
「宣長の出現によって、従来のさくら観、
あの生の輝きとしてのさくら、
そして美しい女人の面影を誘った優しいさくら、
また行く春の愁いをたたえた繊細な感性を育てたさくらは、
『血潮のさくら』に覆われた」
・・・と、こうやって抜粋引用すると
これまた誤解を招くかもしれないが。
宣長の時代の章だけでなく、各章ところどころで
彼について酷評しているので実際に宣長が嫌い、なのか、
彼の思想やらさくら観がホントにイヤなんだろうな、と感じた。
あと、近代から戦中の「皇国史観のナショナリズム宣揚の花」
としての「国華さくら」が哀しくて仕方ないんだと思う。
これだけ桜、愛されてるんだなあ。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
作品中、語られている桜はどの桜か。
都市の桜、鄙の桜、故郷の桜。
いろいろな種類の桜のなまえ。
推理される様子も楽しい。
桜博士って呼びたくなるくらいたくさんの
桜が記述されているのに、実物カラー写真が無いのは
誠に惜しい。文庫版の他に、近年新書から同タイトルで
改めて(?)刊行されているようだが、そちらでは
写真なども載っているのだろうか。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
私は桜、大好きなので、最初からとても興味深く楽しく読めた。
好きなものは熱く語るべし。
それが例えちょっと極論だったり偏ってたりしても
その情熱で読ませるときもある。
ただ最後の章(12)の現代小説に関しては、
著者の趣味全開なので、ところどころしか共感しない。
桜と恋、桜と女人、桜とエロスは確かに魅力的で
美しい画や映像を連想させる。
美しい女人の面影・・なるほど・・(?)
谷崎はともかく渡辺作品で『王朝文化の伝統が、ようやく
本流に戻ったといえる』と断言しているのを読んで
そりゃ、センセイの趣味好みに合うからやろと
ツッコミ入れさせていただきたいと思う。
ISBN:402260641X
著:小川 和佑
朝日文庫(朝日新聞社) 1991/03 ¥479
目次
1 さくら讃歌=プロローグ
日本の春
≪桜の樹の下には屍体が埋まってゐる!≫
さまざまのさくら
2 古代のさくら=飛鳥・奈良時代
秋に咲くさくら―『日本書紀』のさくら
さくらの歌物語
「桜華」をめぐって
万葉のさくら
桜児説話
平城京のさくら
3 王朝絵巻のさくら=平安時代I
さくらの歌―平安京の春
憧れと郷愁の花
散りゆくさくら
さくらの物語―伊勢・源氏など
『古事談』と南殿のさくら
4 薄命に咲く=平安時代II
移りゆく時代に
武門のさくら
さくらと吉野信仰
薄明に咲く―桜町中納言と泰山府君―『平家物語』のさくら
5 さくら美の完成者たち=鎌倉時代
唯美者たちのさくら観
西行桜―シダレの可憐さ
さくらの唯美者
東国のさくら―実朝
定家・そのさくら観
6 さくらのドラマツルギー=室町時代
室町さくら文化前史
常照皇寺の御車返し―里桜花開く
『花筐』・甦る王朝のさくら
継体伝説と淡墨桜
7 聖から俗へ=桃山時代
広がるさくら美の波紋
『閑吟集』の風流
醍醐の花宴―さくら観の転換
8 新しいさくら文化の開花=江戸時代
生活文化のさくら
『江戸名所花暦』
さくら図鑑の流行
江戸のさくら流行―芭蕉のさくら
蕪村・一茶―天明のさくら
攘夷と「国華」―思想化するさくら
9 文明開化とさくら=明治時代
さくらが変わる―ソメイヨシノの出現
文明開化とさくら
明治の花見―ベルツの日記から
ハーンの『怪談』―不思議なさくらに因む物語
散る花といのち―さくら観を変えた思想
祇園のさくら―吉井勇の「祇園冊子」
新体詩人たちのさくら観
10 さくらの歌びとたち=大正時代
さくらの歌びとたち
白秋・空穂・迢空
朔太郎・犀星のさくら
11 昭和文学の桜譜=昭和時代I
死のさくら―梶井基次郎
咲き極まるさくら―三好達治・谷崎潤一郎
坂口安吾『桜の森の満開の下』―さくらの復権
石川淳の桜鬼―『修羅』中世の物語
現代詩のさくら
12 現代文学に咲く=昭和時代II
浪曼派のさくら―五味康祐のさくら
さくらの復興―水上勉『桜守』
宇野千代の『淡墨の桜』
惑いの花―渡辺淳一の『桜の樹の下で』
終章・中村真一郎のさくら愛―『雲のゆき来』『美神との戯れ』
日本各地のさくらの種類・名桜名所10選・日本のさくら一覧
あとがき
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
・古典から現代まで『文学』に観るさくら、さくら観。
文学者たちの目に映るさくら。
愛して語る、評する。
・毎年季節になると静かに流行る「さくら」をテーマにした
今の歌を、著者はどう思うか訊いてみたい。
・著者が本居宣長のさくら観がキライなのはよくわかった。
「彼は詩的想像を全くわかってない」
「彼のさくら愛はきわめて視野の狭い強烈な自己愛の愛であった」
「宣長の出現によって、従来のさくら観、
あの生の輝きとしてのさくら、
そして美しい女人の面影を誘った優しいさくら、
また行く春の愁いをたたえた繊細な感性を育てたさくらは、
『血潮のさくら』に覆われた」
・・・と、こうやって抜粋引用すると
これまた誤解を招くかもしれないが。
宣長の時代の章だけでなく、各章ところどころで
彼について酷評しているので実際に宣長が嫌い、なのか、
彼の思想やらさくら観がホントにイヤなんだろうな、と感じた。
あと、近代から戦中の「皇国史観のナショナリズム宣揚の花」
としての「国華さくら」が哀しくて仕方ないんだと思う。
これだけ桜、愛されてるんだなあ。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
作品中、語られている桜はどの桜か。
都市の桜、鄙の桜、故郷の桜。
いろいろな種類の桜のなまえ。
推理される様子も楽しい。
桜博士って呼びたくなるくらいたくさんの
桜が記述されているのに、実物カラー写真が無いのは
誠に惜しい。文庫版の他に、近年新書から同タイトルで
改めて(?)刊行されているようだが、そちらでは
写真なども載っているのだろうか。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
私は桜、大好きなので、最初からとても興味深く楽しく読めた。
好きなものは熱く語るべし。
それが例えちょっと極論だったり偏ってたりしても
その情熱で読ませるときもある。
ただ最後の章(12)の現代小説に関しては、
著者の趣味全開なので、ところどころしか共感しない。
桜と恋、桜と女人、桜とエロスは確かに魅力的で
美しい画や映像を連想させる。
美しい女人の面影・・なるほど・・(?)
谷崎はともかく渡辺作品で『王朝文化の伝統が、ようやく
本流に戻ったといえる』と断言しているのを読んで
そりゃ、センセイの趣味好みに合うからやろと
ツッコミ入れさせていただきたいと思う。
ISBN:4488413056
著:北村 薫
創元推理文庫(東京創元社) 2004/04/09 ¥588
「円紫師匠と私」シリーズ第5作目。
・山眠る
・走り来るもの
・朝霧
3篇収録。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
大学を卒業して出版社の編集の仕事についている「私」。
日常のなかで感じ、考え、人との話しや触れ合いで
またゆっくり思考を巡らせるヒロイン。
先輩の結婚式場でひとりの来客に
見覚えがあること、そしてどこで会ったのか
そのひとをなぜ覚えていたか、再会した理由・・・が
ほどかれる様子に、小さなロマンスの始まりを見る。
お話は、最初は俳句。
次のはなしは究極の(?)二択を迫るリドル・ストーリー、
次は落語の忠臣蔵・・・が
物語の支えている。
いつもながら著者の博識ぶりには驚く。
ただ、今回は物語をじっくり味わう為に
それぞれの知識なくしては
全部を楽しむことはできないのではないか、と
思わせる。それが残念。
それぞれにかなり深い知識のある人、と書くと
何やら曖昧な言い方になるが・・・
知っている人なら(もっと)楽しめるのに、という
つまりは寂しさがあるのかも。
登場人物の会話に借りて、著者の好きなもの
感じ入ったコトについてのエッセイを読んでいるような気分。
それらはちょっと、読者をほったらかしにすると思う。
余談を語りすぎて物語からどんどん離れていく
某作家の歴史小説のように、
なんか、えんえんと語られる教授の話を
わかんないけど一生懸命頷いて聞いてる生徒のような感じ。
途中、ちょっと飽きたり眠くなったり。
自分が不勉強なのがつくづくわかって
なんだか拗ねたくなる。
でも、また顔を上げさせる展開は各所にあり、
読んだ後に、ほのかに残る余韻もまた
このシリーズならではなのかも・・。
著:北村 薫
創元推理文庫(東京創元社) 2004/04/09 ¥588
「円紫師匠と私」シリーズ第5作目。
・山眠る
・走り来るもの
・朝霧
3篇収録。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
大学を卒業して出版社の編集の仕事についている「私」。
日常のなかで感じ、考え、人との話しや触れ合いで
またゆっくり思考を巡らせるヒロイン。
先輩の結婚式場でひとりの来客に
見覚えがあること、そしてどこで会ったのか
そのひとをなぜ覚えていたか、再会した理由・・・が
ほどかれる様子に、小さなロマンスの始まりを見る。
お話は、最初は俳句。
次のはなしは究極の(?)二択を迫るリドル・ストーリー、
次は落語の忠臣蔵・・・が
物語の支えている。
いつもながら著者の博識ぶりには驚く。
ただ、今回は物語をじっくり味わう為に
それぞれの知識なくしては
全部を楽しむことはできないのではないか、と
思わせる。それが残念。
それぞれにかなり深い知識のある人、と書くと
何やら曖昧な言い方になるが・・・
知っている人なら(もっと)楽しめるのに、という
つまりは寂しさがあるのかも。
登場人物の会話に借りて、著者の好きなもの
感じ入ったコトについてのエッセイを読んでいるような気分。
それらはちょっと、読者をほったらかしにすると思う。
余談を語りすぎて物語からどんどん離れていく
某作家の歴史小説のように、
なんか、えんえんと語られる教授の話を
わかんないけど一生懸命頷いて聞いてる生徒のような感じ。
途中、ちょっと飽きたり眠くなったり。
自分が不勉強なのがつくづくわかって
なんだか拗ねたくなる。
でも、また顔を上げさせる展開は各所にあり、
読んだ後に、ほのかに残る余韻もまた
このシリーズならではなのかも・・。
英国流立身出世と教育
2005年1月29日 読了本
「英国流立身出世と教育」
ISBN:400430234X 新書
著:小池 滋
岩波新書(岩波書店) 1992/06 ¥561
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
『身をたて名をあげ、やよはげめよ』
かつての日本だけでなく、<立身出世>を夢見て
教育に力を入れる親、そして勉学にいそしむ子供たちは
イギリスでも同様にたくさんいた。
社会階級によって厳然たる差別(区別)がある英国。
産業革命によって近代化がすすむイギリスにおいても
垣根を越えるには、人より優れたる学力能力を要した。
有名なディケンズ、ブロンテ姉妹などの作品を引用して
当時の教育とその裏側をわかりやすく説明してくれた。
ただ、作者の本当に言いたいことは
英国の教育史の側面について暴くことだけではない。
日本人はどうなのか、最後に厳しく問いかけてくる。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
ガヴァネスという単語をちゃんと意味とともに
知ったのは森薫氏の『エマ』だと思う。
それまで聴いていたとしても意識しなかった。
その後、船戸明里氏の『アンダーザローズ』を
オンラインコミックで読んだ。
なので、この新書はこのニ作品に影響されて選んだもの。
特に後者作品のメインキャラである眼鏡の似合う女性の設定は
本書『英国流〜』に描いてある女性の境遇と同じだ。
上流階級や「身分のきちんとした」女性が稼ぐこと、
働くことへの否定。だが生きていくためのお金は
空から降ってくるわけではない。
豊かで身元のしっかりした夫の庇護を受けなければ、
独身のまま自活するのも困難だった牧師の娘の立場。
下層の労働者階級ならば、お針子でもなんでもして
金銭を得ることもできるのに、それができない面子。
『アンダーザローズ』の副読本としてもかなりお薦め。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
新書ゆえに文字数ページ数から、話したいこと綴りたいこと
すべてを書くのは控えよう、という著者の「ことわりがき」が
何度も出てくるのだが、その代わりに、他の参考文献を
何冊も紹介してくれるので、資料探しにも役立つ。
今までも「新書」を読んできて、こういう本は、
そういう役割もあるのかなあ、と思った。
それと、作者が好きな分野を楽しんで(?)書いているのが
伝わってくるような文章だったので、読んでいて引き込まれた。
ISBN:400430234X 新書
著:小池 滋
岩波新書(岩波書店) 1992/06 ¥561
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
『身をたて名をあげ、やよはげめよ』
かつての日本だけでなく、<立身出世>を夢見て
教育に力を入れる親、そして勉学にいそしむ子供たちは
イギリスでも同様にたくさんいた。
社会階級によって厳然たる差別(区別)がある英国。
産業革命によって近代化がすすむイギリスにおいても
垣根を越えるには、人より優れたる学力能力を要した。
有名なディケンズ、ブロンテ姉妹などの作品を引用して
当時の教育とその裏側をわかりやすく説明してくれた。
ただ、作者の本当に言いたいことは
英国の教育史の側面について暴くことだけではない。
日本人はどうなのか、最後に厳しく問いかけてくる。
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ガヴァネスという単語をちゃんと意味とともに
知ったのは森薫氏の『エマ』だと思う。
それまで聴いていたとしても意識しなかった。
その後、船戸明里氏の『アンダーザローズ』を
オンラインコミックで読んだ。
なので、この新書はこのニ作品に影響されて選んだもの。
特に後者作品のメインキャラである眼鏡の似合う女性の設定は
本書『英国流〜』に描いてある女性の境遇と同じだ。
上流階級や「身分のきちんとした」女性が稼ぐこと、
働くことへの否定。だが生きていくためのお金は
空から降ってくるわけではない。
豊かで身元のしっかりした夫の庇護を受けなければ、
独身のまま自活するのも困難だった牧師の娘の立場。
下層の労働者階級ならば、お針子でもなんでもして
金銭を得ることもできるのに、それができない面子。
『アンダーザローズ』の副読本としてもかなりお薦め。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
新書ゆえに文字数ページ数から、話したいこと綴りたいこと
すべてを書くのは控えよう、という著者の「ことわりがき」が
何度も出てくるのだが、その代わりに、他の参考文献を
何冊も紹介してくれるので、資料探しにも役立つ。
今までも「新書」を読んできて、こういう本は、
そういう役割もあるのかなあ、と思った。
それと、作者が好きな分野を楽しんで(?)書いているのが
伝わってくるような文章だったので、読んでいて引き込まれた。
ISBN:4004304148
著: 関口 安義
岩波書店(岩波新書) 2003/05/20 ¥777
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1月3日読了。
実家の膨大な書物のなかから見つけて、一晩で読んだ。
芥川の「人物」を探すのに適していると思った。
彼の評伝としては今まで読んだなかで一番面白かった。
作品論がメインではなく、彼の生涯を追っている。
引用された作品はなじみのあるものが多く、
芥川研究の入り口に立った人たちの
これからの道案内にもなるだろう。
そのうち手元に置く為に改めて買おうかな、と
思わせる本でした。
著: 関口 安義
岩波書店(岩波新書) 2003/05/20 ¥777
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1月3日読了。
実家の膨大な書物のなかから見つけて、一晩で読んだ。
芥川の「人物」を探すのに適していると思った。
彼の評伝としては今まで読んだなかで一番面白かった。
作品論がメインではなく、彼の生涯を追っている。
引用された作品はなじみのあるものが多く、
芥川研究の入り口に立った人たちの
これからの道案内にもなるだろう。
そのうち手元に置く為に改めて買おうかな、と
思わせる本でした。
ISBN:4061496735 新書 2003/07 ¥756
「神聖ローマ帝国」
著:菊池 良生(講談社現代新書)
『見果てぬ夢「古代ローマ帝国の復興」を求め、
抗争を繰り返しながらも、850年間にわたり
中近世ヨーロッパの中心に存在し続けた
「帝国」の実像に迫る。』>表紙より
序章 神聖ローマ帝国とは何か
第一章 西ローマ帝国の復活
第二章 オットー大帝の即位
第三章 カノッサの屈辱
第四章 バルバロッサ−真の世界帝国を夢見て
第五章 フリードリッヒ二世
−「諸侯の利益のための協定」
第六章 「大空位時代」と天下は回り持ち
第七章 金印勅書
第八章 カール五世と幻のハプスブルク世界帝国
第九章 神聖ローマ帝国の死亡診断書
終章 埋葬許可証が出されるまでの百五十年間
-------------------------------------------
巻末に神聖ローマ帝国関連略年表と参考文献あり。
本書途中に家系図あり。
-------------------------------------------
山川の世界史小事典をみると神聖ローマ帝国は、
"Holy Roman Empire of the German Nation"
"Heiliges Ro"misches Reich Deutscher Nation"
とかなっているのは何でだべ?って疑問が
ちょこっとだけわかるようなわからないような。
本書にもありますが、ある時期(15世紀以降)
「ドイツ国民の神聖ローマ帝国」が名称になってたらしい。
うーんと。まだ関連書籍いっぱい読まないと・・・。(井上トロ化)
でも以前読んだ「ハプスブルク家(講談社現代新書)」とも
リンクしてて面白かった。
ヨーロッパ統一、世界帝国の復活という夢に
歴代の皇帝たちが取り憑かれてるような様子がなんとも。
それにしてもヒトラーの時代、第三帝国って
なんで第三なんだろとも思っていたが
第一 <神聖ローマ帝国>
第二 <ドイツ帝国(第二帝制)>
第三帝国、なんですね・・・。
----------------------------------------
名前いろいろ出てきて、どーも
銀河英雄伝説を思い出しましたです。
黄金樹は倒れた・・。
「神聖ローマ帝国」
著:菊池 良生(講談社現代新書)
『見果てぬ夢「古代ローマ帝国の復興」を求め、
抗争を繰り返しながらも、850年間にわたり
中近世ヨーロッパの中心に存在し続けた
「帝国」の実像に迫る。』>表紙より
序章 神聖ローマ帝国とは何か
第一章 西ローマ帝国の復活
第二章 オットー大帝の即位
第三章 カノッサの屈辱
第四章 バルバロッサ−真の世界帝国を夢見て
第五章 フリードリッヒ二世
−「諸侯の利益のための協定」
第六章 「大空位時代」と天下は回り持ち
第七章 金印勅書
第八章 カール五世と幻のハプスブルク世界帝国
第九章 神聖ローマ帝国の死亡診断書
終章 埋葬許可証が出されるまでの百五十年間
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巻末に神聖ローマ帝国関連略年表と参考文献あり。
本書途中に家系図あり。
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山川の世界史小事典をみると神聖ローマ帝国は、
"Holy Roman Empire of the German Nation"
"Heiliges Ro"misches Reich Deutscher Nation"
とかなっているのは何でだべ?って疑問が
ちょこっとだけわかるようなわからないような。
本書にもありますが、ある時期(15世紀以降)
「ドイツ国民の神聖ローマ帝国」が名称になってたらしい。
うーんと。まだ関連書籍いっぱい読まないと・・・。(井上トロ化)
でも以前読んだ「ハプスブルク家(講談社現代新書)」とも
リンクしてて面白かった。
ヨーロッパ統一、世界帝国の復活という夢に
歴代の皇帝たちが取り憑かれてるような様子がなんとも。
それにしてもヒトラーの時代、第三帝国って
なんで第三なんだろとも思っていたが
第一 <神聖ローマ帝国>
第二 <ドイツ帝国(第二帝制)>
第三帝国、なんですね・・・。
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名前いろいろ出てきて、どーも
銀河英雄伝説を思い出しましたです。
黄金樹は倒れた・・。
ISBN:4041010020 文庫 角川書店 1971/04 ¥483
著:泉 鏡花
(角川文庫)
「義血侠血」
「夜行巡査」
「外科室」
「高野聖」
「眉かくしの霊」
以上5編収録。
------------------------------
世界遺産に熊野古道と高野山が登録されたとか何とかいうことで
関係ないけどふと思い出して読んでみた。
泉鏡花は「天守物語」「夜叉ヶ池」は読んだよなあ、と
思いつつ本棚を見ていたら、岩波のほうで読んだんだった。
角川文庫版は活字が大きくて助かる。
「義血侠血」
人力車と馬車のたわいない競争から
顔見知りになった男女が、やがて何の因果か
法廷で裁かれる身と告訴する身となって向かい合う。
二人の出会いはまるでロマンスなりよ。
それなのにこの結果は何たることか。
どうでもいいけど哀しく暗すぎる。
「夜行巡査」
これまたどうしたことでせう。
これで作家が言いたかったことは何か
深く考えてしまいます。
職務には忠実に。法律と己の正義と信じて
融通をきかせることも情けをかけることもなく。
このおまわりさんは果たしてヒロインをホントに
好きだったのだろうか?
こういう人にも人並みに愛情はあるのか。
慈しみの心と恋情は別々の器官から?
「外科室」
玉三郎さんが映画にしませんでしたっけ?
これまた美、美、美。
美しいけどまたちょっとゾッとする光景。
「高野聖」
エロス。名作文学だから・・と見過ごしそう。
何事も表現の仕方だと思う。
「眉かくしの霊」
夜中に読んだらけっこうこわかった。なんでだろ。
ほのぐらい庭に、幻想の花。
------------------------------------------
読後の余韻はけして幸せなものではないが
何か不思議な心地。
夏休み、読んでみるのもまた一興か。
著:泉 鏡花
(角川文庫)
「義血侠血」
「夜行巡査」
「外科室」
「高野聖」
「眉かくしの霊」
以上5編収録。
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世界遺産に熊野古道と高野山が登録されたとか何とかいうことで
関係ないけどふと思い出して読んでみた。
泉鏡花は「天守物語」「夜叉ヶ池」は読んだよなあ、と
思いつつ本棚を見ていたら、岩波のほうで読んだんだった。
角川文庫版は活字が大きくて助かる。
「義血侠血」
人力車と馬車のたわいない競争から
顔見知りになった男女が、やがて何の因果か
法廷で裁かれる身と告訴する身となって向かい合う。
二人の出会いはまるでロマンスなりよ。
それなのにこの結果は何たることか。
どうでもいいけど哀しく暗すぎる。
「夜行巡査」
これまたどうしたことでせう。
これで作家が言いたかったことは何か
深く考えてしまいます。
職務には忠実に。法律と己の正義と信じて
融通をきかせることも情けをかけることもなく。
このおまわりさんは果たしてヒロインをホントに
好きだったのだろうか?
こういう人にも人並みに愛情はあるのか。
慈しみの心と恋情は別々の器官から?
「外科室」
玉三郎さんが映画にしませんでしたっけ?
これまた美、美、美。
美しいけどまたちょっとゾッとする光景。
「高野聖」
エロス。名作文学だから・・と見過ごしそう。
何事も表現の仕方だと思う。
「眉かくしの霊」
夜中に読んだらけっこうこわかった。なんでだろ。
ほのぐらい庭に、幻想の花。
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読後の余韻はけして幸せなものではないが
何か不思議な心地。
夏休み、読んでみるのもまた一興か。
マギンティ夫人は死んだ
2004年7月19日 読了本
ISBN:415070063X 文庫 1982/01 ¥672
「マギンティ夫人は死んだ」MRS McGINTY’S DEAD
著:アガサ・クリスティー Agatha Christie
訳:田村 隆一
ハヤカワミステリ文庫(早川書房)
雑役婦をしている女が、自分の家の一部屋を貸している
間借人の青年に殺された。数々の証拠が見つかり、
明らかに青年ベントリィの有罪を表しているにも関わらず
事件を担当したスペンス警視はどうしても納得できない。
彼は旧知の友、エルキュール・ポワロにこの事件の再捜査を
依頼した。死刑が確定しているベントリィは本当に無実なのか。
真犯人はいったい誰なのか。
殺人事件が起きたブローディニィに滞在するポワロ。
その小さな村には過去を隠したいひとたちが住んでいた。
---------------------------------------------
えーと打ち止めのはずだったポワロですが、
探したらありましたウチにも。
これは昔の版で、クリスティ文庫じゃないほう。
ずいぶん前に古本屋で買ったものだと思います。
レヴュー検索では672円になってますが
持っているのは定価600円、1993年の版でした。
や、どのみち古本ですが。
今回は狂言回しやぴったりくっついてるワトスン役もいなくて
ポワロの推理に時々翻弄されるのは事件を持ち込んだ警視さん。
まず、何かアヤシそーな女性がいろいろ出てきます。
最後まで複雑怪奇で、犯人当ても章ごとにあっちいったり
そっち飛んでいったり。なかなか面白かったです。
推理以外では・・・
きちんとしたことや綺麗好きでグルマンのポワロが
かなりひどい宿に長いこと滞在しているところが
なんとも可哀相に思えてきました。
「マギンティ夫人は死んだ」MRS McGINTY’S DEAD
著:アガサ・クリスティー Agatha Christie
訳:田村 隆一
ハヤカワミステリ文庫(早川書房)
雑役婦をしている女が、自分の家の一部屋を貸している
間借人の青年に殺された。数々の証拠が見つかり、
明らかに青年ベントリィの有罪を表しているにも関わらず
事件を担当したスペンス警視はどうしても納得できない。
彼は旧知の友、エルキュール・ポワロにこの事件の再捜査を
依頼した。死刑が確定しているベントリィは本当に無実なのか。
真犯人はいったい誰なのか。
殺人事件が起きたブローディニィに滞在するポワロ。
その小さな村には過去を隠したいひとたちが住んでいた。
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えーと打ち止めのはずだったポワロですが、
探したらありましたウチにも。
これは昔の版で、クリスティ文庫じゃないほう。
ずいぶん前に古本屋で買ったものだと思います。
レヴュー検索では672円になってますが
持っているのは定価600円、1993年の版でした。
や、どのみち古本ですが。
今回は狂言回しやぴったりくっついてるワトスン役もいなくて
ポワロの推理に時々翻弄されるのは事件を持ち込んだ警視さん。
まず、何かアヤシそーな女性がいろいろ出てきます。
最後まで複雑怪奇で、犯人当ても章ごとにあっちいったり
そっち飛んでいったり。なかなか面白かったです。
推理以外では・・・
きちんとしたことや綺麗好きでグルマンのポワロが
かなりひどい宿に長いこと滞在しているところが
なんとも可哀相に思えてきました。