『自律機動戦車イヅナ』

◇PC向けソフトウェア。メーカーはTEAーCROWN。
 CPU:Pentium III-450以上
 対応OS:Windows98SE/Me/2000Pro/XP
 その他詳細は公式サイトなどの商品説明をご覧下さい。

◇<女の子のための「乙女+ボーイズゲーム」>のコピーで
 長い準備期間を経た後、2006年末に発売された。
 その名の通り、女性向けに作られたライトノベルAV。
 
 テキストアドベンチャー方式。活字を読み進めていき、
 時折表示される選択肢を主人公の代わりに選び、
 その結果それぞれ異なるエンディングに辿りつく。
 

◇このゲームの特徴はザッピングシステム。
 PCとなるメインキャラクターは兄と妹。
 最初は妹の視点から物語が進み、クリアすると
 同じ物語を最初から、今度は兄視点でプレイできます。

 妹と会話しているとき、兄はこんな風に考えていた。
 仕事でいなかったときはこうだった、など
 同じ出来事でも違った面から見ることで
 物語が少しずつわかってきます。

 妹シナリオにて選択した行動は、続く兄シナリオに
 影響を及ぼすのが面白いです。

◇またゲームのセーブ・ロード、スキップ機能など充実。
 快適でした。セーブデータはたくさん格納できるし、
 クイックセーブあり。最新セーブデータ表示あり。
 次の選択画面、前の選択画面にクリックで戻れます。
 テキスト送り、スキップは自動あり。それらの速度調節可能。
 選択肢で止まっても、選んだ後で継続して早送り可能。
 主人公二人と登場人物の声はひとりひとりON/OFF可能。

 残念だったのが、登場人物の声の大きさでした。
 主人公の声は二人ともよく聞き取れましたが
 他の登場人物の声がときどき小さくなってバランスが悪かった。
 
 PCである主人公が大きめなのは、遠近感を演出して(?)
 自分と第三者を分けることができるかもしれない。
 しかし音量は一定のほうが助かる。

 声質などで同じレベルでも聞き取りにくくなる場合、
 それぞれのキャラクターボイスのON/OFFだけでなく、
 数段階の音量調節機能がついていても良かったかも。

 

 
◇家庭用ゲーム機、携帯サイト、PC対応ゲームと
 のっける端末は違えど、女性が楽しむ「乙女ゲー」または
 「BLゲー」は、近年本当に増えた。
 毎年、数多く制作されています。

 このゲームは、上記のように説明されてはいるが
 通常の乙女ゲーでもないため、どのジャンルとして
 観たら適当か、ちょっと考え込むゲームです。
 また、それだけ他にはない作品だと思いました。

◇メカ+美少女の香りがしますが、
 ロボに乗り込んで戦闘したりはしません。

 乙女ゲーでこのタイトルって素敵だ!と思って
 発売前からかなり期待していたタイトルです。

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以下、内容に触れています。
ネタバレや攻略について引っ掛かる場合があります。
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◇メインストーリーは、兄妹の物語。だと思いました。
 早くに両親をなくし、一時期離れ離れになって
 過ごしていた兄と妹が再会します。

 人としてどこか欠けているような兄。
 気遣うばかりで本心が言えなかった妹。

 お互いのことは一番大事に思っているんですが
 それがすれ違ってしまいます。

 それぞれのブラコンシスコンぶりが微笑ましい。
 兄・妹の物語が好きな人にはお薦めです。

 
 選択肢によってはインセストルートが存在する。
 たとえ「ファンタジー」でも、それら展開が苦手な方は
 分岐に注意しながら読み進めていくほうが良い。
 兄には一度バシッとびしっと、言いたいこと我慢しないで
 言ってやれば良いのだと思います。
 

◇「人間らしさとは何か」「人と人でないものを区別するものは何か」
 という極めて難しい問いの答えを模索する科学者の話でもある。
 

 より人に近いロボットを作るためには
 まず人がどんな存在なのか、どんな仕組みか
 解いていく必要があることを改めて考えました。

◇<認知発達ロボティクス>というキーワードでは、たくさんの本が
 検索結果に出るが、どれも面白そうと思えるなら、このゲームの物語も
 興味深く追っていくことが出来るんじゃないか。
(講談社ブルーバックスの『知能の謎』とか)

 男子攻略よりも、場面ごとに噛み砕いて説明してくれる内容に
 関心が向いてしまいます。

 わかりやすく、プレイヤーに優しく。ということでは
 急を要する場面でも説明的な長台詞があったりして
 そのへんがちょっと楽しかったです。
 
 

◇妹シナリオは、確かに乙女ゲー。
 兄の他は、同級生か年下(?)しか攻略できませんが
 学園モノなら珍しくない。
 しかし、攻略対象に幅が欲しかったかもしれない。
 絵柄もあるが、全体的に攻略対象の男性キャラは可愛らしい。

 せっかく登場する年上キャラクター二人は
 妹の攻略対象ではありません。

◇兄シナリオでは、妹以外では男子と友情を育むことができ、
 他の女性キャラクターを攻略することはないです。
 
 BLとあえていうほどの内容ではなく、会話場面や
 台詞などで勝手に想像するのが容易いプレイヤー向け。
 

◇妹シナリオで、兄を攻略、クリアした場合は
 兄シナリオでは妹としかエンディングを迎えられない。
 兄妹エンディングが大団円として扱われないのは
 作り手の良心回路なのか、それとも・・・。

 この世でたった二人だった兄妹が、お互い依存から抜け、
 それぞれの世界に飛び出そうとしていくのか
 それとも閉じられた世界のままか。
 
 どちらが正しい、などという言い方は出来なくて
 プレイヤーの受け取り方次第なのかなと思います。

◇ヒトであるはずの兄総一郎が、どこか心が無い様に感じたり
 ロボットであるイヅナに、ヒトと同じ心があるように
 思えるあたりが、不思議で哀しい話だなーと。


◇あと、人でないもの、例えば獣や妖怪など
 通常は人間に懐かない、受け入れそうにないような
 異形のモノと、唯一交流できる純粋な少女の話かな。

 でてくるロボットですが、油揚げを差し上げたくなります。

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