『妻たちの二・二六事件』

ISBN:4122001854 1975/01 ¥660

著:澤地 久枝

中公文庫 (中央公論新社)

二・二六事件で処刑された青年将校たちの妻は
事件当時まだほとんど二十代半ば。
のこされた若い妻たちがたどった昭和史。

加担した将校たちの事件前後の様子、
夫婦の馴れ初めから家族に宛てた遺書まで。

それぞれの女性、遺族や関係者に会って取材した結果を
優れた構成力や文章力で丁寧に綴ったノンフィクション。

未亡人たちの悲劇をなぞっただけの作品ではなく
女性たちから視た「事件」と「其の後」を書くことで
表題の通り、二・二六事件そのものが浮かび上がる
仕組みになっています。

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結婚してまもなく事件が起きて、
夫が叛乱に加担していることを知った女性もいる。

そういう思想を持ち活動していたことを
元々知っていたり、薄々感づいていた女性もいる。

数ヶ月もないような新婚生活と、
後何十年という日々を「のこされた家族」として
過ごさねばならなかった人。

何事かを為そうというとき、己を犠牲にしても
成し遂げようとすることがあって、
万が一身の危険があるかもしれないのに
直前にヨメをもらう若者の気持ちに、率直に
「どうして?」と問い掛けたい気持ちが表れる。

子供を遺したい、伝えたいという気持ちや
何事かの前に愛する家族を持ちたいと思うか。
これほど厳しい結果になると予想していなかったのか。

迷った末に、自分たちの「信念」を選択して
家族を斬り捨てるときの苦しさと
念願叶わなかったときの後悔の気持ちは
のこされた手紙にも見えてきます。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

それから、人の生きかたそれぞれのこととか。

過去を振り切って新しくやり直すこと。
過去を抱きしめて生き続けること。

どちらが良いか悪いかなどではなくて。

(読了07-0208)

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