ISBN:4122008468 文庫 中央公論新社 1981/01 ¥294

「追想 芥川龍之介」
芥川文
著:中野妙子(中公文庫)

亡くなる前までの何年間かに渡り、筆者中野氏が未亡人に
聞いた話を書き起こしたもの。
1975年に筑摩書房から、
中央公論社からは1981年刊行。

千年の夢や他の芥川論で語られていたエピソードが
だいたい入っていた。
芥川の作家(作品)論を書くとき、その私生活にまで
踏み込むならば、多くの研究者が一応は目を通したことだろう。

十代で嫁ぎ、10年間連れ添ったなかで
二人きりで過ごせたのは最初の一年くらい。
養父母と伯母に気を遣い続けた若い夫とその妻。

行動する前は必ず相談するように、と伯母から
固く言われていた嫁。

「何も知らずに嫁ぎました」

何か、放蕩の限りを尽くしたようなイメージの勝新さんの
伴侶であったタマオさんもそう言ってたなあ・・。
外に女性をつくっても、何をしても
男の人は「そういうものだと思っていました」って。

時代が違うから、とそれだけで終われない。
想像してもまだまだそれすら及ばないような
苦労や、つらくて哀しいときがあっただろうに
その語り口はとても静か。

夫を美化もせず、恨み言もなく、
こういうことがありました−と淡々とつづられる。

悩み苦しんで、精神を病んでいく人の傍らで
何とか一日でもこの世に生きていて欲しいと願う
周囲の人の心遣いが本当に哀しくて、迫ってくる。

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それにしても、知ってしまったからには
もう知らない時間には戻れない。

いろいろあったんだ〜・・・。としか。

間際で相手の女性から知らせがあったものの
心中の一歩手前で助かったことや
他の複数の女性と関係があったことなど。
ああ、そうか、この作家もそうなのかと。

でも、これで嫌いになるわけではなさそう。
最初にまず作品を読んで、それが何よりも好きで
心に残るから、だと思う。
読み返すとき、時々思い出すかもしれない。

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