ISBN:4101236178
著:藤本 ひとみ (新潮文庫)11/1995 ¥620

最近欧州史づいてるので、以前買って読まずに
そのままだった本を引っ張り出してきました。
わーもう10年近く前なんだ。
いい加減ためてる本読め・・。

有名なディカプリオの映画も、鉄仮面伝説についても
よく知らないのですが、この小説では大胆な仮説を
打ち立てているらしいです。

キャラクターの現在も過去も恋の甘いロマンスばかりが
目立つようですが、政治や風俗についてかなり調べてあり
れっきとした歴史小説。
前半キャラの飾りでしかなかった肩の刻印の秘密も
下巻で明らかになり、ブルボン王朝の秘密だけでなく
政治の腐敗と冤罪事件の全容が見えてくる。
当時のイギリスやイスパニアとの緊迫した関係も語られてます。
王の器とは、神と国が認めることとは何なのか考えちゃいます。

ジェームズがルイ14世の双子の兄だということは
上巻から徐々に読者にも想像できるようになりますが
では、その鉄仮面をかぶるのはいったい誰なのか?
というのがラストに語られます。
だいどんでんかえし。・・・のような少女漫画的には
お約束のような(笑)

マリエールのことを考えた場合、すべての邪魔や障害は
取り払われ、恋の成就となって大団円なのですが、
それにしてもヒロインは強い、といった感想です。
ひたむきな姿はいいが、マリエールもマノンにも
どちらにも共感できないなー。多くの同性に支持を受け
好かれるようなヒロイン像を描くのは難しいだろうと思いました。

ルイ14世の愛人の立場を自覚したとき、屈辱と
自立の意識に目覚めるマリエールですが
実際のところルイ14世の愛人は屈辱的で
恋の終わりが見えるのに、初恋の男だったら
何でも乗り越えていかれるのか〜・・。

自信が無くてヘタレで優柔不断なルイ14世ですが
ここまでダメ男だとかえって愛しくなります。
上巻でマリエールとマノン姉妹を恋の虜にして
去っていったジェームズですが、どんなに「真の宝石」
「正当な血筋」を強調しても、私はいまいち強烈に
惹かれるものがありません。定番ヒーロー的。
丘の上の王子様か、伊集院少尉的ポジション(古)。

やはり報われない脇役好き、知略に長けた参謀好き。
アドリアンやフランソワといった脇が魅力でした。

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