ISBN:410610024X 新書
著:赤坂 治績
(新潮社(新潮新書)) ¥680

今でも年配の方や、和モノに興味のある人なら
何となく聴いたことがある(と思うんだけど)台詞
がいろいろあったので、元ネタが知りたくて読みました。

「絶景かな、絶景かな」(『金門五三桐』)
「こいつは春から縁起がいいわえ」(『三人吉三廓初買』)
「問われて名乗るもおこがましいが」(『青砥稿花紅彩画』)

などなど。

本書では同じ作者、種類によって一章にまとめられ
古い時代のものから順にあげられています。
第一章の近松から第六章の河竹黙阿弥まで。
最初の章では人形浄瑠璃でも有名な『曾根崎心中』など
世話物の台詞が取り上げられてます。

歌舞伎をまったく知らない読者のために
上演された当時の時代背景から上演事情、
キャスティングもわかりやすく書かれていて
入門書にはうってつけかも。

一章ごとに繰り返し基礎的なことを説明してくれるので
興味のある台詞だけ途中から読んでも楽しいと思います。

ひとつひとつ物語の内容を語っていたら
きっと一冊では終らないだろうから
端折って綴ってあるところは
「もうちょっと教えて〜」とさらに知りたくなります。

タイトルにもある弁天小僧菊之助の台詞を最初に
知ったのは少女漫画の『はいからさんが通る』でした。
元来、古い時代劇の映画やドラマ再放送が大好きな
子供だったので、芝居がかった江戸っ子の痰火や
商人さんの上方言葉、廓言葉などなじみが深い。

文楽の語りも歌舞伎の台詞も、
引っ掛け言葉(洒落)が多く、韻を踏んだり
調子が良かったり、耳に心地いいんです。

歌舞伎の舞台を観たのは、高校の芸術鑑賞で
何か有名な題目(忠臣蔵の数場だったかしら・・?
それすらも覚えてないぞ)を観て爆睡してたくらいで
テレビの舞台中継などもほとんど観ていませんでした。

ただ、まったく歌舞伎とは違う他の「芸」で
例えば活字で表現されたもの、映像作品、
パロディや、ドキュメンタリーなどで
何か自然と目にしたり耳に入っているようで
かなりの台詞に覚えがありました。
あとは、台詞に多く故事成語、諺が引用されているせいで
聞いたことあるように感じるのかしら。

これから機会があったらぜひ舞台を観てみたいなあ、
と思わせる本でした。

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